各党の政党本部が普段どんな仕事をしているか考えたことがあるだろうか?
私自身、国会議員秘書として永田町で働くなかで確信したことがある。それは、与党の党本部は霞が関の各省庁を動かす重要な歯車であり、行政権は持たないものの、実質的に一つの省庁のように機能しているということだ。そしてこの機能こそが与党の政権担当能力そのものだと私は思うようになった。
法律案の多くは政府が国会に提出する政府提出法案で、各省庁が起草した案を内閣法制局が審査し、その後閣議決定を経て国会に提出する。しかし、実際の運用は閣議決定前に自民党本部にある政務調査会での議論と了承を経るのが慣例となっている。
政務調査会は外交や防衛、厚生労働など14分野に分けて部会を設置しており、法案の了承を得たい官僚と議題に興味のある議員が出席し、内容をすり合わせながら政策を磨き上げていく場となっている。
部会は原則として自民党所属国会議員であれば誰でも出席でき、出席議員がそれぞれの地元事情や政治姿勢、考えなどを法案に反映させるべく率直に意見をぶつけ合うため、時に激しい議論に発展する場合もあり、平場での会議でどうしてもまとまらないときは部会長(各部会の責任者)の一任を取り付けた上で、部会長や党本部担当職員が官僚と調整し最終的な落としどころを探り、現実的な法案に仕上げていく。つまり、法律案にまとまる段階で自民党議員は論戦によって案文を修正し、党としての機関決定をしている。この調整力と最後はまとまる力こそが、自民党が長らく政権を握り、国家運営を行うことができている最大の要因だと実感している。
ある政務調査会担当の職員から聞いた話では「部会長は1年で交代することが多いが、党本部職員は異動が少なく、長く同じ分野を担当できるため、専門性が非常に高い職員もいる」らしい。また、部会開催前には部会担当の党本部職員と官僚が打ち合わせをし、どのような内容であれば部会の了承を得やすいかや反対している議員の問題意識がどの点にあるかなどの事前調整や整理のうえ、部会当日を迎えることもある。こうした人材の蓄積と継続性が、日本政治を下支えしているのだろう。
いま、日本政治は大きな転機に立っていると思う。自民党と公明党の連立政権は衆院に続き参院でも過半数を割り込んだ。たとえ国会で多党間で合意が難しくても自民党と公明党がまとまれば数の力で法律を作れる時代は終わったのだ。これからは従来の自民党内の調整に加え、野党や他会派との協議、国会全体での合意形成が求められる時代になった。霞が関と政権与党の政党本部という二つの歯車が法律を作ってきたこれまでの構図に、第3の歯車として、国会全体の合意形成が必要不可欠になったのだ。
この新しい政治の時代を切り開くためには、与野党を問わず、党内で政策を決定をするプロセスを整備し、政党本部事務局の体制を強化することが求められているのではないだろうか。一度政党間で合意した内容がほごにされるようなことがあってはならない。
どの政党が政権を担うかどうかにかかわらず、しっかりとした政策形成能力を備えれば、国民にとっての選択肢は広がり、政治の可能性も豊かになる。永田町の現実は、単なる数の力から合意の力へと移り変わっている。
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1999年9月19日生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒。元自民党大阪府連学生部長。19年参院議員、松川るい大阪事務所入所。22年から東京事務所勤務。趣味は飛行機(写真・搭乗・航空無線)
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