【Bリーグ】「ハンディある子へ希望を」 持病と付き合いコート内外で活躍 豊川出身の山本楓己選手 

2025/10/03 00:00(公開)
豊川での講演会

 豊川市出身のBリーガー山本楓己選手(27)は、2025~26シーズン、B3リーグ「東京八王子ビートレインズ」でプレーする。ポイントガードとして安定したゲームメークが持ち味だ。重度の食物アレルギーという持病を持ち、ハンディキャップと向き合う人々へ勇気と希望を届ける「Fukiproject」に取り組む。

 

「なぜ僕だけ」 特退生に選ばれたバスケ強豪校にも断られ・・・

 

 バスケと出合ったのは小学1年。4歳上の兄がミニバスケットボールをプレーする姿を見ていた。「走るのが得意だった僕に、コーチが『ランニングについてこれたら入れてあげる』と声をかけてくれた。本当に合格して、クラブ最年少で入団した」と振り返る。持ち前の俊敏性と兄との練習で培った基礎技術で、6年時には主将として東海大会3位に貢献した。

 

 しかし、大きな壁が立ちはだかっていた。生まれつき重度の食物アレルギーを持ち、卵、甲殻類をはじめ、食べられないものが多かった。小中高の12年間、給食を口にできず、母が作った弁当を持参した。同級生からの心無い言葉に傷つくこともあった。さらに小学5年で、特定の食品摂取後の運動でアレルギー症状を引き起こすようになり、エピペン(自己注射薬)の携帯が必須となった。中3の時に意識を失って救急車で運ばれたことがある。これが原因で、特待生に決まっていた強豪校から入学を断られ「県外でバスケを続ける」目標が絶たれた。

 

 「何で僕だけ」。病室で自暴自棄になりかけた山本選手を支えたのは、両親や中学の顧問たちだった。受け入れ先を必死に探し、安城学園高校への進学が決まった。同校は、食後2時間以内に体育が入らないよう時間割を調整し、生徒たちはエピペンの使用方法を学習した。こうしたサポートのなかで、山本選手は主将を務め、数年ぶりにチームをインターハイ出場に導いた。「苦難を乗り越えてこられたのは、先生や仲間たちの支えがあったから」と感謝する。 特待生として名古屋学院大学に進学。東海大会優勝、インカレ連続出場などの成績を残す。この時期に「応援される選手に」という思いからSNSでの情報発信を開始。これが後の「Fukiproject」の原点となった。

 

練習生から這い上がりBリーグデビュー

 

 大学卒業後、プロを目指すもけがの影響で2年間はチームに所属できない日々が続いた。2022年、「琉球ゴールデンキングス」の練習生として念願のBリーグデビュー。翌年には「信州ブレイブウォリアーズ」に移籍し、再び練習生からスタート。「契約してもらえるように死に物狂いで頑張った」と語る。23年秋、ついに選手登録され、長年の夢であったプロ契約を勝ち取った。

 

 「兄も大学を諦めて自分のサポートに回ってくれた。本気でプロを目指して苦しんだ3年間だったが、つらい時に一緒に泣いてくれた家族や、協力してくれた周りの人が喜んでくれたことが何よりうれしかった」と言う。その年の11月16日の「京都ハンナリーズ」戦では、自己最多の27得点5アシストと大活躍、それでも「毎日が勝負。ユニホームをいつまで着られるかプレッシャーを感じながらプレーしていた」

 

 昨季はB2の「神戸ストークス」に移籍し「チームの中心的な顔になる」と臨んだが、けがでプレー時間は伸びず退団。今季から八王子でプレーする。「けが前とは筋力も回復スピードも全く違うし、思うように体が動かないこともある。そんな時に『新しい自分をつくる』ことに目を向けるようにしてから、目の前の景色が開けたような感覚があった」と言う。「今を受け止めて、そこから新しい自分を探していきたい」と意気込む。

神戸時代の山本選手、ゲームメーク力が持ち味 ⒸB.LEAGUE

「弱さを受け入れる強さ」を胸に

 

 「Fukiproject」も今年で4年目。6月には豊川市内で「夢の追いかけ方」をテーマに講演し、子どもたちに自身の体験や夢を語った。ほかにも、プロ契約までの過程やリハビリの様子などをSNSで発信したり、中学生ら向けのバスケ教室を開いたり、精力的に活動している。「こんな僕でも努力してプロになれた。ハンディキャップを抱えた子どもたちに『僕にもできるかもしれない』と希望を持ってもらいたい」と願う。

 

 小学校の卒業文集に「病気の子どもたちに夢や希望を与えるプロバスケ選手になる」と書いた。「弱さを受け入れる強さ」をテーマに、障がいを持つ子どもたちの希望の象徴であり続けるため、今後も山本選手の挑戦は続く。

豊川でのバスケ教室
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北川壱暉

 1998年浜松市生まれ。昔からの夢だった新聞記者の夢を叶えるために、2023年に入社した。同年からスポーツと警察を担当。最近は高校野球で泥だらけの球児を追いかけている。雨森たきびさん(作家)や佐野妙さん(漫画家)らを取り上げた「東三河のサブカルチャー」の連載を企画した。読者の皆さんがあっと驚くような記事を書けるように日々奮闘している。趣味はプロ野球観戦で大の中日ファン。

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