読売ジャイアンツの選手、監督として活躍し、6月に89歳で亡くなった長嶋茂雄さんのお別れの会が21日、都内の東京ドームで開かれた。王貞治さんら球界関係者をはじめ、政界、経済界から多くの人が参列し、故人をしのんだ。かつて大学時代の長嶋さんと対戦した元愛知大学野球部主将の渡辺恭二さん(89)=西尾市=と近藤武雄さん(89)=豊川市=は、自宅のテレビでその様子を見つめ、「あの時代を一緒に過ごせたのは一生の宝物」と涙ぐんでいた。
渡辺さんが長嶋さんと出会ったのは、西尾高校3年時に参加した立教大野球部の選抜試験だった。県内屈指の捕手として呼び声が高く、愛知大の当時の監督で立教大出身の小山常希知さんから推薦を受けた。のちに南海ホークスで活躍した杉浦忠さんの姿もあった。試験は数日間あり、1年生で中心選手の長嶋さんは杉浦さんの部屋をよく訪れていた。渡辺さんらも同席し「彼女や地元の話ばかり。オーラはすごかったが、楽しい人だった。毎晩談笑できるのがうれしくて、いま思えばすごい空間だった」と回想する。
2年後、渡辺さんは小山さんが企画した両校の交流戦で長嶋さんと再会する。2人が2年生、長嶋さんが3年生の頃だ。最も印象深いのは初対戦で1対0で勝った試合だ。前日まで大雨で渡辺さんは「天気が良くなれば勝てる」と冗談半分で仲間と話していたが、当日は青空が広がった。「本当にその通りになった」と笑う。
試合は長嶋さん、杉浦さんらスター軍団の立教大が大勝するとみられていたが、両投手の好投で0対0で試合が進んだ。愛知大が長嶋さんから空振り三振を奪って勢いづくと、三塁前に転がる内野安打で1点を先取し、中盤に向かった。
その後、ひやりとした場面も。長嶋さんがライナー性の打球を三塁線に放った。結果はファウルで「入っていれば同点だった」と近藤さん。渡辺さんは「三塁手がジャンプして左翼のポール付近に打球が消えていった。あのスイングスピードは異次元だった」と衝撃を語る。この試合で愛知大は大金星を挙げ、秋の神宮大会では、ダークホースとして脚光を浴びた。
その後の対戦では一度も勝てなかったが、長嶋さんが打席に入る際に「きょうは札束と野球をやるもんだ」と冗談を言い、「変なこと言うな」と返したのが思い出に残っているという。
その後、二人は社会人まで野球を続け、長嶋さんは国民的スターとなった。死去後「改めてすごい人と野球をやったんだなと実感した」と渡辺さん。近藤さんは「大きい存在を失い、1週間くらい立ち直れなかった」と話し、現在も岡崎市内の草野球チームに所属し長嶋さんの分まで現役を続けるのが目標という。
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1998年浜松市生まれ。昔からの夢だった新聞記者の夢を叶えるために、2023年に入社した。同年からスポーツと警察を担当。最近は高校野球で泥だらけの球児を追いかけている。雨森たきびさん(作家)や佐野妙さん(漫画家)らを取り上げた「東三河のサブカルチャー」の連載を企画した。読者の皆さんがあっと驚くような記事を書けるように日々奮闘している。趣味はプロ野球観戦で大の中日ファン。
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