美術家で編集者の味岡伸太郎さん(76)=豊橋市菰口町1=が、「たかが五平餅 されど御幣餅」(B6判、192㌻)を春夏秋冬叢書から出版した。誕生からの歩みと、各地で親しまれている多様な姿を組み合わせて、そのルーツや各地の違い、歴史の中で変化する位置づけなどを紹介する。
うるち米を半つぶしぐらいにして串に刺したり付けたりして、みそやしょうゆベースのタレをぬって焼いたもの。中部地方の山間部に伝わる郷土料理として知られ、現在は平野部まで広がっている。
今では多くの店で販売されて気軽に味わえるものだが、そのルーツは山の神にささげる供物だったとされる。その後、晴れの日に家で作り食べるごちそうになり、戦後しばらくたってから今のようになった。また塩尻から南の塩の道と五平餅の分布圏が一致しており、この道を伝わって広がった可能性が高い。
地域で形が変わるのも特徴で、団子のように丸くして串に刺すタイプから、平たくして串にくっつけるものまである。最近はスイーツ風のものまで登場している。串もさまざまなものがある。
奥三河で開かれる「花祭」でも使われ、豊作や無病息災を願い、五平餅を持ち、タレを顔に塗り付ける場面がある。また五平餅を販売する数多くの店を取材しており、文章の合間で紹介する。
味岡さんは「五平餅を販売する約100店の店を食べ歩きして、さまざまな文献を調べ、伝承された内容を取材してまとめた一冊です。調べてみると奥が深く、面白い世界でした。民俗文化の一端を知ることができます」と話す。
税込み2200円。豊川堂などで販売している。問い合わせは春夏秋冬叢書(0532・33・0086)へ。
購読残数: / 本
1973年生まれ、豊川市出身。建設業界に勤務後、96年に入社。2022年から豊川市を担当している。趣味は美術館巡り。ポッドキャストでラジオを聞くのも好きで、さまざまな番組を楽しんでいる。
週間ランキング
日付で探す