豊橋市の豊橋総合動植物公園(のんほいパーク)や中心市街地で、カラスやムクドリなどの鳴き声を模した特殊な笛による追い払い実験が始まった。従来の花火や音による威嚇では数分で戻ってきてしまうカラスに対し、彼ら自身の「言葉」で対抗しようという新たな試みだ。
「ロケット花火を打ち込んでも、10分もすれば戻ってきてしまう。カラスはずる賢い」。そう頭を悩ませるのは伊藤紀治公園長だ。展望台などの高所に集まる大群は、来園者に威圧感を与えるだけでなく、深刻なふん害も引き起こしており、懸念の声が相次いでいる。
これまでもロケット花火や、夜間イベント「ナイトZOO」期間中の天敵(タカ)の鳴き声放送、LEDライトの設置など対策を講じてきたが、数日たてば元通りになり、効果は長続きしなかった。対策を難しくしているのは施設の特性だ。飼育動物へのストレスを避けるため、動物エリアから離れた場所で作業せねばならず「園長が花火を振りかざすのは印象が良くない」との声もあり、強硬手段には限界があった。
鳥インフルエンザなどの感染症リスクも切実だ。2016年に秋田市の大森山動物園でコクチョウからウイルスが検出され、132羽が殺処分された前例がある。のんほいパークでは、スタッフが園内で着替えるほか、靴底の消毒や飼育スペースへの防鳥ネット設置など厳重な対策が徹底されている。
被害はカラスだけではない。アオサギが視力の衰えた高齢のホッキョクグマの隙を突き、餌を横取りする事態も起きている。伊藤公園長は「安全で餌がある動物園を『格好の場所』と学習し、居着いてしまっている」と分析する。
12月上旬、伊藤園長と、対策用笛「ノルディック・クロウ」を扱う「トムキャット」の杉山寛光さんによる実証試験が行われた。この笛はカラスの多様な鳴き声を再現できるよう開発されたものだ。実験では笛とロケット花火を交互に使用し、反応を比較した。いずれも一時的な追い出しには成功したものの、数時間後には元の場所に戻っており、持続性の面で顕著な差は確認できなかった。一方、吹く回数については、1回だけでは一部が反応するにとどまったが、4回、5回繰り返すと群れが一斉に飛び立つという違いが見られた。
園の獣医師の木谷良平さんは「聞き慣れない音の繰り返しに驚いたのではないか。今後、危害がないと学習して慣れてしまう可能性もある」と指摘する。
全国では23年にJR長岡駅周辺で最新型レーザー、昨年は越前市でドローンを使った実験も行われている。伊藤公園長は「限られた予算でやるしかないが、今後はドローンなど最新鋭の手法も検討したい」と語る。杉山さんも「さらに検証したい」と意欲を見せる。
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1998年浜松市生まれ。昔からの夢だった新聞記者の夢を叶えるために、2023年に入社した。同年からスポーツと警察を担当。最近は高校野球で泥だらけの球児を追いかけている。雨森たきびさん(作家)や佐野妙さん(漫画家)らを取り上げた「東三河のサブカルチャー」の連載を企画した。読者の皆さんがあっと驚くような記事を書けるように日々奮闘している。趣味はプロ野球観戦で大の中日ファン。
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