後継者不在だった民宿の事業承継に伴い、神戸市から移住した2人が営むイタリア料理店「ポルト・アズーロ」が2月27日、田原市池尻町の店舗で関係者と開業レセプションを開いた。オーナーはイタリア出身のオレアストロ・ピエトロさん(66)と、元会社員の太田弘恵さん(59)。不動産売買で進めた交渉は難航の末、地元金融機関の助言で友好的事業買収(M&A)が成立。2年越しで新天地での開業につながった。
ピエトロさんはイタリア南部カラブリア州の出身で、母国やスイスなどの料理店を経て1991年に来日した。95年のイタリア料理店開業を機に、神戸市内で昨年までに3店舗を経営した。
外資系商社勤務の太田さんとは神戸市へ移住してすぐ知り合った。オーベルジュ(宿泊付きレストラン)のような店を持つのが夢だったとピエトロさんが打ち明け、地価が安い地方での物件探しを始めた。
兵庫県明石市出身の太田さんにとっても、漁港はふるさとを代表する景色の一つだ。2人のふるさとに共通する立地を求めたところ、赤羽根漁港に面した老舗民宿「くろしお荘」が見つかった。
民宿は73年11月設立の有限会社。取引先の豊橋信用金庫と政策金融公庫を介し、昨年10月に法人の営業権譲渡も含めた第3者承継でM&Aの交渉が成立した。前所有者は廃業と不動産売却を検討し、要件には「地元優先」を掲げて先約者との交渉を進めていた。
交渉を復活させたのは、太田さんが入れた所有者の家族への連絡だった。当時は先約者との条件交渉が難航していたという。
取引先の豊橋信金は所有者に不動産売却ではなく、2人への事業譲渡も含むM&Aを提案。太田さんと家族とのやり取りでピエトロさんの熱意を知った所有者も、政策公庫を交えたM&Aの再交渉に応じた。昨年10月の事業譲渡に続き12月に不動産も引き継いだ。
新店舗は数種類のピザやパスタ、リゾットなどのほか、郷土料理で赤羽根漁港でも水揚げされるシラスの保存食も販売する。レセプションでは事業計画でも関与した神戸市の税理士法人などの関係者を招き、新調した石窯で焼いたピザなどの料理を振る舞った。
ピエトロさんは「ふるさとと同じ景色を見て決断した。ゆったりくつろげる店にしたい」と意気込んだ。太田さんは「前所有者の不思議な縁や周囲の支援で障壁を乗り越えられた。すべて青信号に変わった心境。将来は宿泊サービスの導入も検討中で夢も膨らむ」と喜んだ。
名物のピザは直径30㌢で1500円から。営業は昼が午前11時半~午後2時、夜は午後5時~8時。水曜定休。問い合わせは同店(0531・45・3186)へ。
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愛知県田原市出身。高校卒業後、大学と社会人(専門紙)時代の10年間を東京都内で過ごす。2001年入社後は経済を振り出しに田原市、豊川市を担当。20年に6年ぶりの職場復帰後、豊橋市政や経済を中心に分野関係なく取材。22年から三遠ネオフェニックスも担当する。静かな図書館や喫茶店(カフェ)で過ごすことを好むが、店内で仕事をして雰囲気をぶち壊して心を痛めることもしばしば。
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