カナダ・エリー湖のミジンコがなぜか新豊根ダムに 東北大研究

2026/05/28 00:00(公開)
発見されたミジンコ「Daphnia retrocurva」(提供)
発見されたミジンコ「Daphnia retrocurva」(提供)

北米以外で世界初の確認

 

 東北大学大学院生命科学研究科の牧野渡助教らの研究グループは、これまで北米大陸にしか生息していないとされていたミジンコの一種を、豊根村の新豊根ダム(みどり湖)で発見したと発表した。北米以外の地域でこのミジンコが確認されたのは世界で初めての記録となる。研究成果は、4月28日に国際的な学術誌に掲載された。

 

 発見されたのは「Daphnia retrocurva」という種類で、頭部が前方から背中側に向かって反り返るような「ヘルメット」状のユニークな形をしているのが大きな特徴だ。2025年に国土交通省が実施した水辺の生物調査で採取されたサンプルの中から見つかった。ミジンコは水中を漂って生きる小型の生き物である「動物プランクトン」の一種だ。

 

 研究グループが、生物のルーツや種類を調べるのによく使われる細胞内の「ミトコンドリアDNA」を解析したところ、カナダのエリー湖に生息する個体と遺伝子の配列がほぼ完全に一致した。さらに、調査した12の個体間で遺伝子の違いが全く見られなかった。遺伝子に違いがないということは、ごく少数の個体や卵が日本に入り込み、そこから増えたことを示している。これらのことから、大昔から日本に自然にいたわけではなく、比較的最近になって人間の活動によって北米から持ち込まれた「外来種」である可能性が高いという。

 

 湖やダムにすむミジンコは、植物性のプランクトンを食べ、自らは魚の餌になるなど、川や湖といった「淡水生態系」における生き物のつながりを支える重要な役割を担っている。近年は人間の活動に伴い、本来の生息域を越えて生物が移動する事例が世界中で報告されている。新豊根ダムではすでに北米原産のオオクチバスなどの外来種も確認されているが、このミジンコがどのような経路で日本にやってきたのか、なぜ今のところこのダムでしか見つかっていないのかは、まだ分かっていない。

 

 今回の発見は、魚や水草のような目に見えやすい生物だけでなく、顕微鏡を使わないと見えないような微小なプランクトンにまで外来種の侵入が及んでいることを示している。牧野助教らは、長年にわたる定期的な生物調査の蓄積が、こうした小さな外来生物の早期発見や、自然環境の変化を捉えるために非常に有効であると指摘している。今後は、このミジンコが日本に元からいる生き物にどのような影響を与えるのかなど、さらなる研究が進められる予定だ。

生息域(提供)
生息域(提供)
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山田一晶

1967年三重県生まれ。名古屋大学卒業後、毎日新聞社入社。編集デスク、学生新聞編集長を経て2020年退社。同年東愛知新聞入社、こよなく猫を愛し、地域猫活動の普及のための記事を数多く手掛ける。他に先の大戦に詳しい。遠距離通勤中。

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