<連載・米の現場から㊤>

2026/07/27 00:00(公開)

生産者のために適正価格維持を

 価格上昇により注目を集めてきた主食用米は年明け以降、値段や販売形態などの変化が続く。今年産の栽培も進み、早ければ8月後半には新米の収穫が始まる中、静岡県西部や豊橋市の売り場や生産の現場を訪ねた。

    ◇

 2025年産の「キープ米」と記載した価格表に、値下げした赤色の金額が並ぶ。浜松市中央区の村上米店が展開する玄米を預かるサービスで、6月下旬時点の30㌔価格だ。地場産の銘柄を見ると「コシヒカリ」「にこまる」「きぬむすめ」の価格はいずれも修正前に比べて2000円安い。店主の鈴木誠吾さん(49)は「物価が上がり価格に敏感になっている」と説明する。

 25年産米が出回り始めた昨秋は例年に比べて仕入れ値が上昇した。農林水産省が実施するスーパーの販売価格調査をみても、昨年9月以降の平均価格は5㌔4000円を上回る水準で推移。仕入れの約7割を地元の農家から調達してきた同店は「例年とは異なり米が集まらず卸などの協力も得て調達した」と明かす。

 ところが年明け以降、下落基調が続く。農水省が今月10日に発表したスーパーの平均価格(6月29日~7月5日)は5㌔3458円と前週より値下がり。一時姿を消した米を選んで購入できる環境にある。「気に入った産地銘柄であれば高くても価格を気にせず買う人もいるが、全体的には値ごろ感のある米を求める傾向にある」(鈴木さん)。価格見直しの頻度が上がる中、鈴木さんは「これ以上は下げられない」と語る。

 異変をさかのぼれば、新型コロナウイルス禍で訪日外国人の減少を含めて消費が低迷したため流通在庫が増加、生産現場では主食用以外への用途に作付け転換を進める一方で、猛暑などの異常気象により生育や品質への影響が出た。さらには日向灘地震を受けた「南海トラフ地震臨時情報」の発表を受け消費者が買い急ぐなど、店舗によっては不足分を補い、消費者ニーズに合わせた価格に近付けようと政府備蓄米や輸入米などを販売したりして対応する中で25年産の販売を迎えた。

 「昨秋に比べて仕入れ値が大幅に下がった」。豊橋市の丸地米穀で代表取締役を務める丸地正直さん(62)も6月下旬の状況をこう語る。下落基調を踏まえ、同社も販売価格を見直しているという。「政府備蓄米も含めて品薄感が出始めたもっと早い段階で国が対策していれば、あれほど相場が上がることはなかったと思う」と振り返る。

 複数の仕入れルートがある同社では昨年、地元産米の取り扱いが増えたという。若手農家と連携した取り組みを進めた経験もある丸地さんはこう続ける。「担い手がやりがいを持って生産し、生計が成り立つ適正価格を維持していくにはどうするか。食料安全保障の観点からも大事なことだ」

赤色で修正した「キープ米」の価格表=浜松市中央区で
赤色で修正した「キープ米」の価格表=浜松市中央区で
地元に根差した「やるじゃん とよはし米」の取り扱いも=豊橋市で
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