アジア・アジアパラ大会「レガシー継承、優しいまちへ」 大会組織委員会副事務局長の中森さんに聞く

2026/08/14 00:00(公開)
国際大会で発行された自身の膨大なアクレディテーションカード(身分証)の前に立つ中森さん=名古屋市緑区の組織委員会事務局で
国際大会で発行された自身の膨大なアクレディテーションカード(身分証)の前に立つ中森さん=名古屋市緑区の組織委員会事務局で

 愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会組織委員会事務局で副事務局長として活躍しているのが日本オリンピック委員会から出向中の中森康弘さんだ。豊川市出身の中森さんに聞いた。

 

 ―担務に「国際」とあります。どういう仕事ですか。

 ◆大会選手団は45の国と地域から参加されます。いかにスムーズに入国し、過ごしていただくか。1万5000人の選手団だけではなく、各国オリンピック委員会の会長だったり、スポーツ大臣だったり。大統領や王室の人などもいます。OCAファミリーと呼ばれる方々は1500人に上ります。専用車をつけ、ホテルを確保し、競技を見に行っていただいたりレセプションや国際交流初事業に参加していただいたり。その準備をしています。

 

 ―受け入れが大変なんですね。

 ◆この大会の主催者は、愛知・名古屋ではなくOCA(アジアオリンピック評議会)です。われわれは開催権をもらい、運営を担う。アスリートが最高のパフォーマンスをできるような競技場づくり、会場運営、快適な宿泊や食事の提供なども。食事も、ハラール・ビーガンなどそれぞれの宗教を考えて提供する必要があります。さらに、定時になるとお祈りをするから、礼拝室をつくるなどの配慮をしなければなりません。

 

 ―今までで一番大変だったのは?

 ◆大変なのはこれからでしょう。これまで、OCA調整委員会が5回開催されました。準備状況説明したり、アドバイスをもらったりしています。

 

 ―事務局が現在地に引っ越してきたのは?

 ◆4月です。今のスタッフは2000人超。今大会は競技会場が県内各地に分散しています。各会場の担当者に今の時点で共通認識を持っていただこうとしており、あと1カ月すると競技会場へ分散していきます。

 

 ―無事に終わるといいですね。

 ◆大会終了後のことも考えています。大会予算は2980億円とされていますが大会経費以外にもIGアリーナや瑞穂公園陸上競技場を整備した。それだけでも1000億円近くかけており、合計すると4000億円以上となっている。県内の施設はかなり古い。トイレが和式だったり、施設各所がバリアフリーじゃなかったり。アジア大会とアジアパラ大会をやることによって、共生社会が実現する。アクセシビリティー向上のため、段差をなくしたりスロープをつけたり。選手、観客に対してもバリアフリーに配慮した施設の改装をしていけば、これからは優しい街づくりとして生かしていく。これがレガシー(遺産)となる。このレガシーを引き継いでアクセシビリティーが向上した街づくりをすることで、今後の高齢化社会にも優しい街になる。

 

 ―スポンサーはどうですか。

 ◆当地で一番感じているのは中部経済界の実力。スポンサーは現時点でアジア大会が61社、パラ大会が51社。これだけの企業が集まるのはすごい。経済界全体で国際イベントは支えていこうという結束力を感じる。それに応えるためにも、大会を成功させなければならない。

 

 ―読者にメッセージを。

 ◆大会コンセプトに、既存施設を活用して効率化するというものがあります。例えば豊橋市は空手とテコンドー、野球がある。新城市はロードレース。蒲郡はセーリングとトライアスロン、田原市にサーフィン。僕の地元の豊川市は競技はやらないがテコンドーの練習会場になっている。県内全体で盛り上がれるように、競技を見ていただけるようになっている。そういった意味でも分散しているのはいい。今回選手村は造りませんでした。メリットとしては競技会場の近くのホテルに宿泊するので移動時間が少なくなる。難しいのは食事の平等性。でもやらなければいけない。またアクセシビリティーを考えたホテルづくり、部屋づくりをしなければならない。日本には障害者対応ホテルは非常に少ない。県はホテルに対して改修補助金を出して改修に努めている。大きな大会が来ないと、国際基準での施設づくりがなかなか進まない。国際基準を認識していただくことは、各自治体にもいいし、受け入れるホテルにとってもいい。地域住民もウエルカムセレモニーをやったりする。トーチリレーも各開催都市は全部走ります。

 

 地域住民、特に子どもたちに、国際感覚を持ち、宗教の違いがあったり、人種の違いがあったりするということを認識してもらう。またパラ大会を間近で見て、障害者でもこんなにすごいことできるんだっていうことを知ってもらいたい。テレビで見るのとは違います。今回は競技会場が分散するので各地の人も見る機会ができます。ボランティアの人だけじゃなくて、地域社会も一緒になって支えてください。皆さまのご協力をよろしくお願いします。

 

なかもり・やすひろ

 1961年豊川市生まれ。市立西部中学校、県立国府高校、筑波大学、同大学院。中学から110㍍障害のアスリート。85年日本体育協会で指導者育成事業を担当。91年、日本オリンピック委員会(JOC)へ移籍。95年ジャパン・オリンピック・マーケティング社長室長としてアトランタ、長野、シドニーの各五輪でマーケティングを担当。2005年オリンピック招致推進室長。11年から「東京2020オリンピック・パラリンピック」招致委員会理事。14年広報企画部長兼東京2020大会準備室室長。23年から現職。趣味はゴルフ。

 

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山田一晶

1967年三重県生まれ。名古屋大学卒業後、毎日新聞社入社。編集デスク、学生新聞編集長を経て2020年退社。同年東愛知新聞入社、こよなく猫を愛し、地域猫活動の普及のための記事を数多く手掛ける。他に先の大戦に詳しい。遠距離通勤中。

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