地域の知の拠点である書店の減少に歯止めをかけるため、豊橋市は今年度から、小中学校の学校図書購入で、保護カバー装着などの「図書装備費」をあらかじめ定価に上乗せして予算化する運用を始めた。東三河の他市の事例や地元書店の強い要望を受けた措置だ。
今年度の学校図書の予算額は小学校が1753万円(昨年度2109万円)、中学校が1367万円(同1530万2000円)。文部科学省が定める1校当たりの冊数の基準の小学校104・1%、中学校114%でクリアしたため全体額は減少したものの、配分予算内での購入冊数や装備費の調整を各校の判断に委ねる柔軟な運用に変えた。
市議会の7会派は今年3月、市内の書店存続に向けた図書調達方法の見直しを求める要望書を長坂尚登市長と原田憲一教育長に提出した。昨年から続けてきた地元書店側の働きかけに議会が応えた形だ。県書店商業組合東三河支部で豊川堂社長の髙須大輔さん(45)と精文館書店社長の矢田猛さん(61)は「このタイミングを逃したら次はないという強い危機感があった。地域の読書環境を守るためには行政の理解が不可欠だ」と語る。
要望書では、地元書店の優先活用を最大の柱に据え、値引き慣行の是正や図書装備費の別予算化を提示した。将来的には、図書館員が導入したい書籍を選択できるシステムの構築や図書装備など、現在は大手が担っている一連の公共図書館業務を、地元組合が一体となって受託できる環境整備を目指すとしている。
出版界を取り巻く環境は極めて厳しい。日本出版インフラセンターの調査によれば、国内の書店数はこの20年間で約1万店が消失し、今年3月末の時点では全国の29・3%にあたる自治体が「書店ゼロ」の状態にある。インターネット通販の台頭や活字離れに加え、コスト高騰が経営を直撃している。
納品体制の壁も厚い。現在、豊橋市の図書館納品は大手流通センターが一括して担っており、地元書店の参入は雑誌などの一部に限られている。他市の図書館や学校現場では、地元書店が納品する際、本の耐久性を高めるフィルム装着やバーコード貼り付けなどの「図書装備」を済ませたうえで納品する。だが、その費用が書籍の定価に含まれるのが慣例だ。書店側には、薄利に加えて煩雑な作業負担が重くのしかかり「全く割に合わない」状況が続いてきた。
大きな転換点となったのは昨年5月の「再販売価格維持契約」の改定だ。従来、官公庁向けは定価販売の例外とされ、市内でも高校の図書館や公共図書館の雑誌の納品では大幅な値引きが常態化してきたが、改定により行政に対しても定価販売が原則となった。値引きを継続すれば書店側がペナルティーを負うリスクがあり、高須さんは「行政に働きかけざるを得ない状況となった」と話す。
昨年6月には経済産業省などは「書店活性化プラン」を策定した。東三河でも昨春から髙須社長と矢田社長らが協議を重ね、「東三河書店存続プラン」をまとめた。その後、豊橋市議の古池ももさんらの協力を得て、要望書の提出にこぎつけた。
熊本市では同年12月に地元書店からの書籍購入を求める請願が採択され、田原市では先行して要望書を提出し、文部科学省と協働して図書館や書店関係者らが一堂に会した勉強会や一般読者向けの講演会などを開いてきたが、豊橋市ではいまだ協議が続く。
精文館書店は豊橋市の三ノ輪店に静岡県内を中心に展開する中古ホビー店「駿河屋」の出店、豊川堂はカフェ「nido cafe」併設店の展開など経営の多角化を進めているが、基軸は本の販売だ。「書店文化を守るためにビジネスとして成立させることが不可欠だ」と髙須社長、矢田社長は口をそろえる。取りまとめに協力した古池市議は「書店は地域にとってなくてはならない存在だ。できる支援を続けていきたい」と話した。
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1998年浜松市生まれ。昔からの夢だった新聞記者の夢を叶えるために、2023年に入社した。同年からスポーツと警察を担当。最近は高校野球で泥だらけの球児を追いかけている。雨森たきびさん(作家)や佐野妙さん(漫画家)らを取り上げた「東三河のサブカルチャー」の連載を企画した。読者の皆さんがあっと驚くような記事を書けるように日々奮闘している。趣味はプロ野球観戦で大の中日ファン。
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