「本離れ」に歯止めをかけようと、書店と図書館が手を結び、読書推進と地域活性化を目指す取り組みが田原市で始まった。9日には田原文化会館で書店関係者や図書館司書らを対象とする研修会が開かれた。文部科学省の「図書館・学校図書館と地域の連携協働による読書のまちづくり推進事業」の一環で全国初。官民の垣根を越えて地域の読者人口を増やす「田原モデル」の構築を目指す。
書籍を取り巻く環境は厳しくなっている。文化庁の2023年度調査では、1カ月の間に本を「読まない」と回答した人が過去最多となり、6割を超えた。全国の書店数も05年比で約4割減少し、23年には1万918店まで落ち込んだ。28年度までには出版配送運賃が現在の約2倍に膨らむとの試算もあり、豊橋市の老舗書店「豊川堂」の高須大輔社長(45)は「今の仕組みでは流通網を支えきれない」と頭を抱える。
一方で、施設数が微増傾向にある図書館でも貸出数は減少に転じている。田原市図書館の是住久美子館長は「スマートフォンの普及に加え、新型コロナウイルス禍で来館習慣が途切れた」と分析した。
これまで、書店側には「無料貸し出しが販売を阻害している」という見方があり、図書館側も書店を「納入業者」と捉えがちで、両者の間には溝があった。この状況を打破すべく、政府は24年から「骨太の方針」に書店活性化を明記。文科省は昨年度の補正予算に5100万円を計上し、田原市を含む全国4都市をモデル地域に選定した。
事務局の「出版文化産業振興財団(JPIC)」の松木修一専務理事(64)は「同じ志を持つパートナーとして理解を深めることが不可欠だ」と指摘する。
1月から田原市を皮切りに、長野県や熊本市など全国4カ所の自治体で、関係者向け研修会や一般読者向けの記念講演会を展開する。将来的には、文科省主導で図書館の本を書店で受け取れたり、図書館での書籍販売ができたりする仕組みや連携システムの導入、図書館本大賞の創設、実践事例の収集や普及にも力を入れたいという。
田原市の研修会には65人が参加した。松木専務理事が業界の動向を解説したほか、高須社長と是住館長がそれぞれの現状や活動を報告。瀬戸市立図書館の吉村みき館長らは、書店から購入した本のコーティング作業を福祉事業所に依頼するなどの事例を紹介した。
高須社長と是住館長が力を入れているのが「次世代の読者育成」だ。豊川堂では、書店で学校図書館司書お薦めの本を紹介するフェアなどを展開。高須社長は「小中学生のうちにいかに楽しい読書体験を積めるかが大事」と説く。田原市図書館では、市内18の全小学校を巡回する移動図書館が好調だ。是住館長は「本を読みたいという需要は確実にある」と手応えを語る。
課題も浮き彫りになった。地元書店を守るため、図書館が直接、定価で購入する仕組みの導入はその例だ。東三河の多くは地元書籍商組合と購入契約をしているが、実際は大手取次や専門業者を介する多層的な流通構造となっている。豊橋市では書籍データの管理やバーコード貼付などのサービスを含む定価取引で、中間経費の発生が地元書店の収益を圧迫する要因となっている。地元書店からの購入は、地域経済の安定につながる一方、図書館側に付帯サービスや事務の負担が生じる。高須社長は「公正な取引環境の整備や地元書店の書籍購入の促進などを行政に積極的に提言したい」と力を込める。田原市図書館職員の岡田梨花さん(23)は「実家の近くの書店が消え、図書館までなくなれば本に触れる機会が失われる。本が市民に行き渡る方法を模索したい」と話した。
一般向け講演会「書店と図書館がつなぐ未来の読者 in 田原市」が田原文化会館で25日午後2時から開かれる。参加無料。第1部は豊橋市出身の作家で人気ライトノベル「負けヒロインが多すぎる!」の著者、雨森たきびさんが登壇する。第2部は高須社長や是住館長らが読書文化を語る。定員300人(先着順)。申し込みはホームページから。
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1998年浜松市生まれ。昔からの夢だった新聞記者の夢を叶えるために、2023年に入社した。同年からスポーツと警察を担当。最近は高校野球で泥だらけの球児を追いかけている。雨森たきびさん(作家)や佐野妙さん(漫画家)らを取り上げた「東三河のサブカルチャー」の連載を企画した。読者の皆さんがあっと驚くような記事を書けるように日々奮闘している。趣味はプロ野球観戦で大の中日ファン。
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