【連載】若手秘書が見た永田町の現実〈7〉厳格に区別される「院」の壁

2026/03/02 00:00(公開)
国会議事堂
国会議事堂

衆院と参院はかくも違う

 参院議員、松川るい事務所を退職し、衆院議員、森原紀代子事務所に転職した。これまで参院議員の秘書経験しかなかった私は、衆院と参院の違いを初日から痛感し、今回はこのテーマで連載を書きたいと思った。

 私が最初に戸惑ったのは、建物の外観こそよく似た議員会館(衆院第一議員会館、衆院第二議員会館、参院議員会館)に運用ルールの違いが多く存在し、部屋の鍵の開け方や車の出入庫ができる時間、公設秘書に採用されるにあたり院に提出する申請書の枚数などの違いがあった。同じ国会なのに、なぜ衆院と参院はここまで厳格に区別されているのか。

 答えは二院制にある。日本の国会は衆院(下院)と参院(上院)の二つの院がそれぞれ独立して機能し、国政に幅広い民意を反映させるため、運用そのものが分かれている。それぞれの院は、予算もそれぞれ計上されており、職員の採用もそれぞれが行っている。その違いは現場を支える人たちの姿にも現れており、議員会館や国会内で日々目にする衛士さん(議会警察のようなもの)も、衆院と参院で採用が別で、制服も少し違う。

 さらに象徴的なのは、胸元の表示だ。衆院は胸元に写真付きのネームがあるのに対して、参院は名前の書いたプレートが付けられている。ほんの小さな違いだが、転職直後の私にはそれが「ここは同じ国会でも、別の院なんだ」と実感する一場面でもある。

 また、われわれ秘書や事務員、衆院及び参院事務局の職員が持つ通行証も厳格に通行範囲が規定されており、場所によっては立ち入ることのできない通路や部屋が存在する。国会議員の公設秘書は国家公務員なので、衆院・参院の議員会館や国会議事堂内を自由に行き来できる。一方で私設秘書は、国家公務員ではないため申請によって通行記章は発行されるが、その種類によっては衆院と参院を行き来することはできない。つまり、衆院議員の私設秘書であれば、参院側へ入れる人数が制限されるし、その逆もしかりだ。

 さらに、一般のお客さまの動線にも、その区別ははっきり表れる。衆院議員会館から参院議員会館へ移動したい場合、いったん外に出て入館手続きをやり直してもらわなければならない。参院から衆院への移動も同様だ。「同じ国会の敷地内なのに」と言われることもあるが、両院の独立性を曖昧にしない厳格な運用がなされている。

 内装の違いも、毎日働く者にとっては小さくない。まず、議員事務室の部屋の広さは、衆院議員より参院議員の方が若干広い。実際に入ったことのある人なら分かるが、内装の雰囲気もまったく異なり、参院の方が重厚感があると私は感じる。たとえばエレベーターのボタン。衆議院はプラスチック製だが、参議院はアクリル製だ。こうした差はささいに見えて、積み重なると「ここは別の場所だ」という感覚を静かに強めていく。

 また夜の議員会館は、その差をさらに際立たせる。以前、午後11時頃に議員会館の部屋を出て帰宅しようとしたとき、参院は廊下の電気が常に点灯し明るかった。一方、衆院はほぼ真っ暗(豆電球程度の光)で、少し怖かった。

 建物の構造にも個性がある。衆院議員会館は一部が吹き抜けになっており、日差しが自然に入る仕組みだが、参院議員会館には吹き抜けがない。光の入り方が違うだけで、空気の温度が違って感じるのが不思議だ。

 そして、二院制の距離感は国会周辺の地下にも現れている。議員会館と国会は地下通路でつながっており、衆院議員会館と参院議員会館も地下で行き来できる。ところが、衆議院第一議員会館と衆議院第二議員会館に限っては、共用の地下通路とは別に、会館同士の移動を早める「近道」のような連絡動線があるが、参院への近道は存在しない。国会における二院制は、制度の言葉以上に、こうした境界線を目の当たりにして初めて実感するものだと思う。

 第51回総選挙が終わり、特別国会が2月18日に召集された。現在は衆院予算委員会で令和8年度予算が審議されている。衆院での審議が終われば参議院に送付され、参議院でも審議される。日本の国会は衆院と参院で熟議をし、決定していく。二院制の重みを感じるそんな1週間だった。

 

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奥野蓮

1999年9月19日生まれ。関西学院大学法学部政治学科卒。元自民党大阪府連学生部長。19年参院議員、松川るい大阪事務所入所。22年から東京事務所勤務。趣味は飛行機(写真・搭乗・航空無線)

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