豊橋駅前のランドマークの一つで、牟呂用水の上に建つビル群「水上ビル」の一室をリノベーションし、新たな民泊施設を誕生させるプロジェクトが動き出した。再生案を募る「水上ビル民泊プロジェクトアイデアコンペ」の公開審査会がこのほど、同市駅前大通1の「MUSASHi Innovation Lab CLUE」で開かれた。建築を学ぶ学生らが「水上ビルならではの暮らし」「記憶の保存」をテーマに、歴史ある建物の魅力を引き出す案を披露した
鉄筋コンクリート3階建てビル2~3階を改修する。オーナーは木村和明さん(46)で、埼玉県出身の移住者だ。普段はソニー系列の会社でエンジニアとして働く。28歳での結婚を機に豊橋で暮らし始め、中古マンションをセルフリノベーションした経験を持つ。当初は「まちなか」との接点は少なかったが、2016年のアートイベント「あいちトリエンナーレ」を機に、「まちの背骨」のような水上ビルの造形美にはまった。
一方で、なじみの店が次々とシャッターを下ろす現状を目の当たりにし「大好きな豊橋を元気にしたい」と、18年に空き物件を自ら「耕す」意味を込めたレンタルスペース「Farmers」をDIYで立ち上げた。アニメ「負けヒロインが多すぎる!」のファンイベントや動画編集セミナーに加え、地元の映画鑑賞会が催されるなど多目的に活用されている。「外から来た自分だからこそ伝えられる魅力がある。新たな滞在価値をつくりたい」と、隣接する空き家をゲストハウスにする「Farmers新館」構想の一環としてプロジェクトを立ち上げた。
コンペでは、一次審査を通過した4グループがプレゼンテーションを行い、最優秀賞には中部大学の西川稜馬さんと今瀬結愛さんの「滞在のレシピ」が選ばれた。「泊まる人がつくる水上ビルの余白」をコンセプトに、ビル全体を一つの宿泊施設として捉えた。既存の構造を生かしつつ、リノベーションで生まれる廃材を家具や建具に再利用して建物の歴史を継承する。模型によって吹き抜けや高低差を生かした多層的な空間が表現され、宿泊客が自由に居場所を見つけられる仕組みが、今後の設計変更にも柔軟に対応できる「伸び代」として高く評価された。
商店街の黒野有一郎理事長は「古い建物を扱う際、その時代にどう建てられたのか、当時の設計者が何を考えていたのかという背景を知ることは重要だ。建築家や設計士として向き合うきっかけにしてほしい」と総括した。木村さんは「今後はアイデアを集約し、来年には面白い建築事業を立ち上げたい」と展望を語った。今後、実施段階へ移行し、来年の開業を目指す。
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1998年浜松市生まれ。昔からの夢だった新聞記者の夢を叶えるために、2023年に入社した。同年からスポーツと警察を担当。最近は高校野球で泥だらけの球児を追いかけている。雨森たきびさん(作家)や佐野妙さん(漫画家)らを取り上げた「東三河のサブカルチャー」の連載を企画した。読者の皆さんがあっと驚くような記事を書けるように日々奮闘している。趣味はプロ野球観戦で大の中日ファン。
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