【連載】アジアの街角から〈7〉急拡大する「谷子」市場|上海産業情報センター 鈴木健大

2026/01/19 04:00(公開)
百聯ZX創趣場の「ONE PIECE 麦わらストア」(上海市黄浦区で2025年8月、筆者撮影)
百聯ZX創趣場の「ONE PIECE 麦わらストア」(上海市黄浦区で2025年8月、筆者撮影)

  上海・南京東路の歩行者天国を歩くと、紙袋を抱えた若者が足を止め、スマホで「推し」の缶バッジやアクリルスタンドを撮影している。彼らが手にするのは、中国語で「谷子(グーズ)」と呼ばれるキャラクターグッズだ。アニメや漫画、ゲームなどのコンテンツIP(知的財産)から派生した商品で、語源は英語のgoods。いま、「谷子経済」という消費圏として注目を集めている。

 

 中国の二次元キャラクター周辺商品市場は、2016年の約50億元(約1100億円)から23年に約1000億元(約2・2兆円)へ急拡大した。29年には約3000億元(約6・6兆円)に達するとの予測もある。

 

 その象徴が、国内初を掲げる二次元文化特化型商業施設「百聯ZX創趣場」だ。老舗商業施設を二次元特化へ転換し、23年1月の開業から18カ月で累計来場者数1500万人超、売上高5億元(約110億円)超に達した。館内には「bilibili」などの中国企業に加え、日本のアニメイトや「ONE PIECE 麦わらストア」など40店舗以上が入居し、週末は全国からファンが集う。

 

 支えているのは、Z世代(1990年代後半から2012年頃に生まれた世代)を中心とした「推し活」だ。実用性よりも、眺めて癒やされる喜びや、誰かと語り合えるうれしさが購買の背中を押す。建物内の一角では、買ったグッズを広げて見せ合い、交換し、SNSに投稿する姿も見られる。そうした一連の営みが自己表現となり、共感の輪に入る「しるし」にもなる。訪れる目的は、もはや買い物だけではない。この熱量が、滞在を生み、回遊を生む。

 

 販売店側はこの「熱量」を読み、あえて商品を小ロット・短サイクルで投入する。欠品と再入荷で話題をつなぎ、限定品やコラボ、ポップアップで来店動機をつくる。裏側ではIPの許諾から企画・デザイン、製造、物流、決済までが一本の産業チェーンとして動き、波及効果は包装・印刷・小物加工など周辺産業にも及ぶ。転売や海賊版対策として、真贋判定やトレーサビリティー(流通履歴の可視化)への需要が伸びていることも、この市場がブームから産業へ移りつつあることを物語る。

 

 景気の指標が揺れても、熱のある場所へ人は集まる。南京東路の熱気が、そのことを示している。

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