戦後利権の黄昏

2017/02/26 00:00(公開)
天下り問題が再燃し始めています。現在、2万5千人強の役人が天下る約4600の特殊・公益法人、そのグループ企業へ投じられる補助金は年間、約12兆数千億円に達し、東日本大震災の復興財源を上回る金額が毎年、費やされています。このことを2009年6月23日提出の質問趣意書で、地元の鈴木克昌衆議院議員が政府に問い質したこともありました。政府の答えは、概ねは、政策的経費として使われているというものでした。つまり、政策的経費として、特殊法人等が「補完的社会事業」という名目で各種事業を行っているわけです。これらの事業が本当に付加価値も生み出しているのか、疑問だとバブル崩壊後、多くの方が指摘してきました。厳しい観点でみれば、税金を投じてその傘下に系列企業群を設立し、そこに役人が天下り、役員報酬を得、随意契約で優先的に業務を発注し、民業を圧迫しているのではないかと、受け止められても仕方がない面があります。現在、日本においては、官製企業と言ってもよい会社は、約3000社にのぼります。考えてみれば、戦後日本システムの特徴は、市場経済において社会主義経済を実践するという二重構造にありました。この既得権益層である官への傾斜的社会資本配分が行き過ぎたために現在、民間が極度の疲弊に陥っているという側面を多くの識者が指摘しています。その結果、現在、日本の政府資産は世界1位になっています。
それでは、ここで上記の12兆数千億円の予算価値を考えてみましょう。5000億円で子供手当てを満額に継続し、取りあえず、3兆円を原発廃炉費用に、4兆円で福島の児童20万世帯を疎開させ、生活保護費を支給し、5兆円で大学を完全無料化する予算を組むことも可能になる規模のものです。
1991年のソビエト連邦崩壊時、ノーメンクラツーラ(赤い貴族)が私物化した社会資本は当時のレートで約34兆円以上と推計され、これは統治者による自国民からの収奪行為においては人類史上最高額に達するとまで言われていました。
現在、そういう視点で、私たちは、日本国の社会資本配分を考えてみる必要がある時期を迎えています。すでに2016年度補正予算は、1.7兆円の赤字国債を発行せざるを得ない状況にあり、17年度予算案では、外国為替特別会計の運用益(2.5兆円)を全額、一般会計へ繰り込む異例の内容になっています。ところで、1100兆円に近づいている公的債務のうち推計260兆円は、特殊法人へ貸付けた財政投融資(現在は財投機関債)によるものです。考えてみれば、元々、国民の資産である郵貯、簡保、年金の積立金を原資とし、本来、有償資金の出資者として配当を受け取るべき国民が、不良債権化しつつある旧財投債の元本、金利までを再負担し、租税として徴収されている結果になっています。国債の9割近くは、国民が市中銀行に預けた貯蓄で消化されています。国民の預貯金で公債を金に換え、国民が納める税金で元本償還を行い、公債金利を払っているわけです。ご存じのように、公債とは、国民の資産と租税を担保にした借金にすぎません。いずれにしろ、日本の戦後社会の仕組みは、経済がある程度成長し、人口が増加すること、パックスアメリカーナが続くことを前提に組み立てられてきました。それらが崩れつつある今、戦後、築き上げられてきた仕組みの中から生じた多くの利権も黄昏(たそがれ)の時を迎えています。
(取締役統括本部長 山本正樹)
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