そこに刻まれた轍 ほのくに幻影物語

2018/11/10 00:00(公開)
音羽川に架かる豊成橋近くにあった劇場「霞座」㊧(桜ヶ丘ミュージアム提供)
④霞座

 明治から大正、昭和にかけて、東三河にも多くの劇場が存在した。豊川市国府町流霞で音羽川に架かる豊成橋付近には、1905(明治38)年に建てられた「霞座」があり、あの“昭和の歌姫”美空ひばりも出演した。
 霞座は地元の有力者らが資金を出し合って誕生。住所の「流霞(りゅうか)」からその名が付けられた。最大で1100人収容の“娯楽の殿堂”として人々に親しまれた。
 舞台では多くの芸能人が公演。美空ひばりや、派手なドレスとハンカチを手にファンを魅了した松山恵子や、粋なマドロス姿の藤島桓夫ら、著名な歌手も登場した。地元の人々も活躍し、戦後まもない1949(昭和24)年には国府町青年団による演劇「宮本武蔵」が披露された他、子どもたちがダンスを披露したり、町内出身で「かわいい魚屋さん」で知られる作曲家・山口保治も登壇。記録映画「南極物語」の上映も行われた。周りにはのぼりが立ち並び、客の履き物の世話をする下足番もいて、住民らが弁当を手に訪れた。
 公演が頻繁に行われた戦後10年ほどは、周辺に飲食店や陶器店、人形屋などが立ち並び、市内外からの来訪者でにぎわった。豊成橋の反対側には、出演する役者や歌手も宿泊した「豊成屋」があった。しかし映画館の隆盛と共に需要が減り、1965(昭和40)年に取り壊された。
 現在、霞座の跡地付近にはウェルネスが運営する老人介護施設「シニアヴィラパトリ」がある。夏には地域住民も招いた交流イベントを開催し、違った形で市民憩いの場となっている。
(由本裕貴)
現在の「霞座」跡地付近。左がシニアヴィラパトリ=豊川市国府町で
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