昔からあいさつやお礼を言えない子が多いといわれます。私も幼少期は人見知りであいさつが苦手で、今でもちゅうちょしてしまうことがあります。
昨今の子どもたちがそれらをうまく言えないのは、慣れていないのと表現力の欠如と私は考えます(大人もそうですが)。剣道は礼に始まって礼に終わります。勝負に勝っても負けても同じ所作になるよう修行をします。
私の体験談ですが、小学2年生の時に交通事故で数カ月、市民病院に入院しました。毎昼の治療後はやることもなく、広い院内を現在の大型店舗内の買い物客のように動き回っていました。院内に多くの友人ができ、学校には行けなかったですが楽しい入院生活を過ごしていました。
特に上の階にいた患者さんと親しくなり、ほぼ毎日病室に遊びに行っていました。名前も知らず何の治療で入院しているのかもわからない人に、今思えば「おじさーん」とノックもせずに無礼だったと汗顔の至りです。でも嫌な顔せずいつも遊び相手になってくれました。
そのおじさんは、私の手術時に手術室の入り口でストレッチャーで運ばれてきた私を待っていてくれて、「がんばってね」と言って頭をなでてくれました。私はとてもうれしく感極まって泣くのをこらえていました。入室まで時間はありましたが「ありがとうございます」「がんばってくるね」の一言が言えず、おじさんが手術日を調べて励ましに来てくれて感謝感激なのに何も言葉が出なかったです。
手術後数日の安静が過ぎ、急いでおじさんの病室に行ったら退院後でした。とても悲しく残念で、後悔の念にかられ猛省しました。これからは瞬時にお礼を言えるようにしよう! 状況にあったあいさつができるように、表現や語彙力などを授業や読書で勉強しよう! と思いました。
今の子どもたちもあいさつやお礼が言えないのではなく、照れや適当な表現方法がわからず、しどろもどろになっているのだと思います。だから稽古では常に礼の必要性を説きながら実践躬行(きゅうこう)です。ポイントは習って慣れよですね。
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