豊橋「理容アサクラ」 53年間の歴史に幕

2023/01/29 00:02(公開)
29日で店を閉める浅倉さん=理容「アサクラ」で
 豊橋市談合町の「理容アサクラ」が29日で閉店する。店主は聴覚障害のある浅倉育雄さん。今年3月に迎える喜寿を前に、約53年間の歴史に終止符を打つ。
 1946年、6人きょうだいの末っ子として生まれた。生まれつき聞こえに障害があった浅倉さんは、豊橋聾学校中学部で理容科を選んだ。当時は手に職をつけるため、「理容」「竹作(竹細工)」「紳士服」の中から選ぶことになっていた。
高等部理容学科、専攻科で技術を磨き、64年12月に東京都の理容店に弟子入り。ヘアデザインやアイロン技術などを3年かけて学び、講師適任証を取得した。68年に豊橋市の清陽館に1年半勤め、70年3月に現在の場所に店を開いた。
 「一生懸命修業して店を構えた。最初はお客さんとのコミュニケーションに苦労した。髪型の写真を見せて選んでもらうなど、話が通じるよう努力した」と浅倉さんは手話と筆談で語った。客は近所だけでなく静岡県湖西市や安城市などからも。月2回、欠かさず来店する常連もいるという。
 82年からは定休日を使い、ろう者で妻優子さんと野依町の福祉施設「あかね荘」への月1回の散髪慰問を開始。27年間続けた。夫婦二人三脚で頑張ってきたが、22年前に優子さんが死去。以来一人で店を切り盛りしている。
 閉店は腕が震えるなど「体力的な問題」。閉店の張り紙を見て散髪に来たり、餞別(せんべつ)を持ってきたりする人もいる。ろうの理容仲間も、以前は東三河に20店舗ほどあったが、現在は浅倉さんを含め3~4店。障害者雇用促進法ができたことで、進路の幅が増えたためだという。
 「53年は長かった」と浅倉さん。「忙しかった時はあっという間だったが、近年の新型コロナウイルス禍で客が減った時は長く感じた。髪の毛が入るので散髪時にはマスクを外してもらうが、通常の生活はとても不便」とマスク生活の苦労も語る。
 2020年には豊橋聾学校出身の映画監督、今村彩子さんの作品「きこえなかったあの日」で取材された思い出も。「少し恥ずかしかった」と振り返る。「温かい支援の中、53年続けることができた。感謝の気持ちでいっぱい」と手を合わせた。今後は「グラウンドゴルフやバドミントンを楽しみたい。週末が仕事で出かけられなかったので、体力を付けたいね」と笑った。
【田中博子】
今村監督による映画の撮影風景
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