事業継続が決まった豊橋市の新アリーナ。建設予定地にある豊橋市営球場の取り壊し工事が近く再開される見込みだ。実はここに、推定14歳の雌猫が暮らしていた。住民投票(7月20日)の結果を受け、動物福祉団体「命にやさしいまちづくり ハーツ」のメンバーが捕獲、家の猫になった。
名前は「チビちゃん」。13年前から餌をやっていたのは市内の60代の女性Aさんら2人。Aさんによると、犬の散歩中に鉢合わせした。家にも猫がいたため、夕方に餌をやるようになった。
ある日、チビちゃんが雌の子猫を連れてきたので、2匹を捕まえて不妊手術をした。手術代は自腹。家では飼えないので元の場所に戻し、餌をやった。子猫はやがて姿を消した。Aさんは「あんなに怖い目に遭わせたのに、かわいそうに」と語る。
1匹だけになったチビちゃんだが、別の女性Bさんも餌をやっていた。Bさんは球場近くに住んでおり、毎日欠かさず餌をやっていたそうだ。
Aさんによると、チビちゃんは球場のバックスクリーン付近で姿を見せた。腹が空いているときはずっと待っていた。ときどき「にゃあ」と鳴いた。1週間も姿を見せずに心配したことが何度かある。臆病なので、球場でイベントがあり、人が集まっていると出てこなかった。Aさんは「どこで寝ていたのかは分からない」と言う。
餌をやっていると苦情を言う人もいた。Aさんは決して怒らず「手術をしてある猫です。見守ってやってください」と頭を下げた。「人なれして虐待されないように」とチビちゃんとは距離を置いて接していたため、触ったことがない。そのおかげで、13年も生きていられたのだろうか。外猫としては異例だ。
昨年、球場の解体工事が始まり、周囲が仮囲いされた。AさんとBさんはチビちゃんをどうしようかとずっと考えていた。Aさんは家に9匹の先住猫がおり、もう飼えない。そうこうするうち、長坂尚登市長の就任で工事は中断。5月に住民投票でアリーナ事業を継続するか否かを問う住民投票が決まった。
「工事再開となったらすぐに捕まえよう」。Aさんは以前から交流のあったハーツメンバーの寺部幸子さんと話し合った。そして住民投票の結果を受け、ハーツの内田雅弘さんが7月23日夜に捕獲器で捕まえた。チビちゃんは寺部さんが引き取り、室内のケージの中で新しい生活を始めた。
寺部さんによると、最初の1週間は餌を食べなかったが、今は一日2回、食べるようになった。トイレを済ませると短く鳴く。近づくと「シャー!」と威嚇する。長い外猫生活のためか、体重は3㌔しかない。
Aさんは「本当は自分が面倒を見るべきなのに申し訳ない。ただ、最近はチビちゃんが弱ってきて、口内炎もあるようだったのでどうしても室内飼いにしたかった。本当にうれしい」と話す。寺部さんの家に行って、チビちゃんと面会するのを楽しみにしている。
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1967年三重県生まれ。名古屋大学卒業後、毎日新聞社入社。編集デスク、学生新聞編集長を経て2020年退社。同年東愛知新聞入社、こよなく猫を愛し、地域猫活動の普及のための記事を数多く手掛ける。他に先の大戦に詳しい。遠距離通勤中。
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