初めての納骨は金子さんの愛猫
田原市野田町の法光院にある犬猫の永代供養塔に、豊橋市の金子通世さんの愛猫の遺骨が収められた。供養塔は7月に完成したばかりで、納骨されたのは初めて。
金子さんは豊橋市出身。新洋画会会員。服飾を中心にリメーク作品を手掛けており、自宅などで教室を開いている。5月に東京であった「第45回記念新洋画会展」ではタペストリー作品の「ひまわり」で文部科学大臣賞を受賞した。
愛猫との出合いは2010年10月。自宅の近所で、後ろ足を引きずり、前足だけで動いていた生後1カ月ほどの雌の子猫を見つけた。母猫は見当たらず、ハンカチで包んで連れ帰った。
動物病院に連れていくと、足が不自由なのは生まれつきと分かった。衰弱しており、助かる見込みはないと告げられた。金子さんは家でみとるつもりで引き取ったが、小さな命が懸命に生きようとしているのを見て、「大丈夫だよ」と声をかけながら一晩中マッサージを続けた。
その思いが通じたのか、子猫は回復した。与えた離乳食の名前からデビフ(愛称デビィ)と名付けた。「自力で立てず、排せつもできなかったが、手がかかる分、かわいかった」と振り返る。半年後には4本脚で立ち、1年後には歩けるようになった。ジャンプは無理だった。
それが腎臓病の悪化で虹の橋を渡ったのは21年7月26日。この10年間に、金子さんは父や妹、次女を亡くし、がん手術を受けた。離婚もあった。「デビィがいなければとても耐えられなかった。神様が巡り合わせてくれた」と語る。がん手術の時は、金子さんの入院で猫がストレスを感じて毛をむしるようになったと聞き、早く帰ろうと決意したという。「簡単に諦めないこと、生命の強さを信じること、毎日を楽しく過ごすこと、すべてデビィから教わった」とほほ笑んだ。
生まれ変わりを信じている金子さんは「来世ではより近しい家族になりたい」と話す。法光院の片岡博雄住職は「生命のつながりを分かっている人のペットが第1号として入ってくれたのはうれしい」と語った。
法光院では永代供養塔への納骨を受け付けている。問い合わせは法光院(0531・25・0120)へ。
【岸侑輝】