蒲郡市の旅館「平野屋」(三谷町)と「旬景浪漫銀波荘」(西浦町)は、一部客室を「旅館の魅力を残したオフィス」としてリノベーションした。今月から入居企業の募集を始める。県内でも先駆的な取り組み。
新型コロナウイルス禍で大きな影響を受けた宿泊業。今後は高付加価値な体験の提供や団体客から個人客へのシフトへの対応など、新たな取り組みが求められている。
平野屋の平野寛幸社長と銀波荘の安藤寿子専務は、全国の観光地活性を手掛ける「イノベーションパートナーズ」(東京都)が、佐賀県嬉野市の旅館の客室をサテライトオフィスとして生まれ変わらせた取り組みを知った。2旅館は、蒲郡ならではの自然や温泉を生かしながら、新しい旅館の在り方に挑戦しようと、県の宿泊事業者向け補助金を活用してリノベーションし、宿泊料だけでなく賃借料も得られる施設を目指した。
平野屋のワークスタイルイメージは、「創造的なアイデアと刺激的なコミュニケーションが生まれる」。オフィスは蒲郡の自然を意識し、三河湾の青を基調とした「海」、蒲郡ミカンのオレンジを基調にした「柑」、市内の山々の緑を基調にした「山」の3部屋を用意した。本格的なサウナが利用できる。
銀波荘のワークスタイルイメージは、「蒲郡で『働く』『休憩』を同時に実現できるぜいたくな体験と、リラックスしながら思索を深めアイデアを生み出す」。オフィスは目の前のパームビーチの浜辺や海などイメージした「漣」「碧」「浜」「渚」「凪」の5部屋を用意した。さらに12月頃に大浴場を改修したカフェをオープンさせる。また、いずれも温泉は営業時間内なら無料で利用できる。
9月30日、メディア向けの内覧会が開かれた。大村秀章知事も2旅館を視察した。大村知事は「旅館の良いところを生かしたコンパクトなサテライトオフィス。この非常にいい取り組みを、広げていきたい」と感想を述べた。
平野屋の3オフィスは賃料月30万円と光熱費費2万円。銀波荘の「漣」「浜」「凪」は賃料月33万円と光熱費2万円、「碧」「渚」は賃料月30万円と光熱費1万5000円(いずれも税別)。
【林大二朗】