豊川市萩町の市立萩小学校が、5年後の2028年度に2学年を一つのクラスにする「複式学級(編成)」になる可能性が出てきた。少子化が原因。市はこれを避けようと尽力している。同市で複式学級となれば、初のケースとなる。
かつては100人以上の児童がいたが、現在は55人にまで減った。今後も減少が予想されている。校区内に住む就学前の子どもの数に変化がない場合、28年度は3年生、4年生とも4人で2学年計8人。このままでは28年度に3年生と4年生による複式学級になる。全校児童も39人になる見通しだ。県の基準では2学年の児童数が計14人以下で推移する場合、複式学級になる。
市は、昨年度から町内会役員や小学校・保育園の保護者代表などで組織する「萩小学校複式編成回避検討委員会」を立ち上げている。その中で、学校統合▽通学区域の見直し▽学校選択制の導入▽小中一貫教育-の四つを検討している。
学校統合は隣接する赤坂小学校との統合を一例に挙げる。通学区域が広がり、スクールバスの導入や学校の跡地利用の検討が必要になる。通学区域の見直しは、赤坂小の一部を萩小にする案。ただ、赤坂小も大規模校でないため実現は難しいという。
学校選択制は、市内のどこに住んでいても萩小に通えるようにする制度。他市では効果があるケースとないケースがあり、やってみなければ分からない。小中一貫教育は、例えば旧音羽地区の小中学校を一つにまとめることが想定されるが、実現までに時間がかかる。
学校統合案は「学校がなくなるのは寂しく、校区のつながりも重要。何とか残してほしい」「統合するのが子どもたちのためになる」と住民の意見が割れている。
また萩住宅跡地の分譲を進めてほしいとの声もある。「萩地区はイオンモール豊川まで車で15分と、利便性が悪くない。宅地を整備すれば住みたい人が出て、子どもの数も増える可能性がある。子どもが増えれば複数学級を回避できる」と訴える。
豊川市は、2019年に「豊川市立小中学校の規模に関する基本方針」を定め、複式学級を回避する方針を掲げており、「なる前に対策する」としている。その理由は「教員が2学年を同時に授業するので、直接指導と間接指導が組み合わされ、児童の集中力が途切れやすい」「直接指導の時間が少なくなる」などとしている。
一方である教育関係者は、「特別支援学級では2学年以上を受け持つケースがある。教員は大変だが、何とかなっている。異学年と一緒に授業ができるなどのメリットもあるので、無理に回避する必要はないのでは」と語る。
かつて過疎地域の課題だった複式学級。今や東三河の平野部にまで迫ってきた。地元の人は「豊川で複式学級になる可能性があるとは思わなかった。いかに人口減社会に対応するのか、平野部でも考える時が迫っている」と話した。
【竹下貴信】