産学官連携や起業家育成など新規産業創出を目的に、豊橋市などが出資する第3セクター「サイエンス・クリエイト」ができたのが1990年。35年がたち、市内の新規事業創出支援の動きが産学官で多様化している。近年は企業で働きながら、主力事業とは別分野の事業などを起こす「社内ベンチャー」の機運を促そうとする動きも生まれている。
市や県、地元企業などの出資で設立した。92年開業の「豊橋サイエンスコア」(西幸町)を拠点に、これまで豊橋技術科学大学などとの共同研究開発や人材育成、産学官交流や起業家支援に取り組んできた。特に2017年に誕生した「スタートアップガレージ」は、現役の経営者が常駐し気軽に相談できる環境と好評だ。
市は20年にイノベーション推進室を開設。農業関連の新規事業創出を目指したビジネスコンテスト「アグリミートアップ」や補助金制度「スタートアップチャレンジ」に取り組んでいる。アグリミートアップの参加社が昨年度は68社で3年前と比べ約2倍に増えており、担当者は「新規事業への関心が高まっている」と期待する。21年には「東三河スタートアップ推進委員会」が発足、近隣市町と協力し、支援の輪を広げている。
大学では豊橋技科大が起業家支援に力を入れている。昨年4月に支援の窓口の一本化を目指し「スタートアップ推進室」をつくり、昨年度から社会実装に向けて助成金や助言などの支援が受けられる「スタートアップ助成制度」を始めた。
民間で新規事業創出に積極的なのが、自動車の精密機械製造などが主力事業の「武蔵精密工業」。自動運転やEV(電気自動車)化などの業界の変化の流れを受けて、17年に「社内ベンチャーを創造するプログラム」を開始、公募で参加者を募った。そこから「アグリトリオ」と「icuco」が誕生した。その後、イノベーション人材育成に比重を置いた内容や、企業合同参加のプログラムも追加され、現在も続いている。
事業開発支援の「Lirem」(豊橋市)が4月に発表したのは事業開発人財に特化した採用プラットフォーム「灯火」。求職者は企業の新規事業の募集を見て応募でき、企業は求職者の経歴や実績を見てオファーができる仕組みだ。求職者の行動特性のほか、企業の文化をレーダーチャートで可視化でき、精度の高いマッチングを支援する。
同社は、これまで高大生向けに自分の価値観や興味関心を言語化し、活動プランを発表するプログラム「火―Okoshi」を展開してきたが、解決できない課題があった。元豊橋技科大生で代表の籔内龍介さん(25)は「学生に火をつけて新規事業や起業に挑戦する若者を増やしても、親の目を気にしたり、スキルに自信がなかったりして就職の段階であきらめてしまう人を見てきた。社内起業が一般化すればもっと気軽に挑戦できるのでは」と期待する。企業側にも大企業を中心に新規事業部門を設ける「社内ベンチャー」の動きが加速している一方で、人材確保に苦労していると知った。籔内さんは「サービスを浸透させて、若者の選択肢を増やしていきたい」と話している。
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1998年浜松市生まれ。昔からの夢だった新聞記者の夢を叶えるために、2023年に入社した。同年からスポーツと警察を担当。最近は高校野球で泥だらけの球児を追いかけている。雨森たきびさん(作家)や佐野妙さん(漫画家)らを取り上げた「東三河のサブカルチャー」の連載を企画した。読者の皆さんがあっと驚くような記事を書けるように日々奮闘している。趣味はプロ野球観戦で大の中日ファン。
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