豊橋・桜丘高の教育哲学語る横山校長
豊橋市南牛川2の私立桜丘高校は、生徒が在校時はスマートフォンを預かる取り組みを続けている。先月28日の卒業式で、スマホに目を向ける在校生や卒業生はいなかった。現代社会では珍しい光景だ。来年創立100周年を迎える教育現場の哲学について横山貴美校長に聞いた。
―スマートフォンを生徒は持ち込めないんですね。
◆かつて、休み時間にみなが同じ格好でうなだれたようにスマホを見ていることに危機意識を持ちました。「日中はスマホを預かってはどうか?」という先生からの声があり、8年前に預かり指導を始めました。「担任に負担がかかる」「壊れたらどうする」などの懸念はありましたが乗り切って実現しました。現在は各クラスの貴重品庫で預かっています。手間ですが、慣れてしまえば違和感はありません。「触るな」「カバンから出すな」は結果的に不公平を生じさせます。自主性に任せようという考えは確かに尊重すべきですが、教室もルールを破る人もいる。それは不公平という不満要素になっていきます。だから我々が責任をもって預かるという形をとっています。
―世界的に未成年にスマホやタブレットは有害だという認識が広がっています。
◆スマホを校内に持ち込ませないという制度を始めた頃、理事長がデンマークやノルウェーの教育現場を視察に行ったところ、全く同じ仕組みを導入している学校があったそうです。「私たちは間違っていなかった」と思いました。子どもたちは、スマホがないので周囲と話をするようになります。「返信をしなければならない」などと縛られている部分も多くて「持ってない時間が楽」と話してくれる生徒も少なくありません。
―今後の桜丘について。
◆桜丘学園の満田康一理事長の曽祖父母が「女性にも教育を」と一日25銭の貯金をしながら裁縫学校を立ち上げたというのが原点です。子どもたちにおにぎりを握って食べさせながら教育をしたという、愛情をたっぷり生徒に注ぐという桜丘の原点を変わらず大切にしていきたいです。この100年で多くの教職員が、数えきれない苦難を乗り越えてきました。これからも、この時代に沿う教育を見極めて、次の100年につなげていきたいです。
【本紙客員編集委員・関健一郎】