大河内松平家が江戸時代に寄進
江戸時代に吉田藩主だった大河内松平家が、豊橋祇園祭で知られる吉田神社(豊橋市関屋町)へ寄進した馬具が市の有形文化財に指定された。祭礼の「神興渡御」(頼朝行列)で「十騎」と呼ばれる古来の儀式を再興するため1923年に寄贈された。大河内松平家のものとみられる13点のほか、来歴不明な21点も付属指定した。
今回指定された馬具は木製で漆塗りのほか、蒔絵(まきえ)や貝を細工した螺鈿(らでん)、金属を加工した象嵌(ぞうがん)など豪華な装飾が施されている。革細工で覆った上から漆を塗ったものもある。このうち、家紋の「三ツ扇紋」や古文書などから、13点は大河内松平家が寄贈したものとみられる。
いずれも17世紀から18世紀に作られ、子ども用馬具もある。
代表的な鞍「黒漆塗三ツ扇紋金紗綾容蒔絵海無水干鞍」は元禄14(1701)年に作られ、鞍前部の家紋はうっすらと残っている。今年度にリニューアルした市美術博物館の企画展で公開された。
子ども用鞍「黒漆塗海有水干鞍」は通常より一回り小さい。鐙(あぶみ)も足のサイズに合わせて奥行きが短い。「朱漆塗皺革包三ツ扇紋海有水干鞍」は革細工で覆って漆塗りを施した。
頼朝行列「十騎」で使用
豊橋祇園祭の神輿渡御では馬に乗った源頼朝役の子どもが、10頭の馬に乗った家臣を従えて各町を巡る十騎が明治初年まであった。神社によると、昭和40年代まで家臣役の馬もそろえ、出発前に境内でお披露目する儀式が続いていたという。
頼朝行列にまつわる神社の所蔵品が文化財指定されるのは6件目。21年度には江戸時代の祭礼を描いた「吉田神社旧式祭礼図絵馬」を民俗文化財に、22年度は「獅子」「獅子・狛犬」を有形文化財とした。文化財センターによると一連の指定の区切りとなる。
水谷雅則祢宜(ねぎ)は「豊橋祇園祭は花火に注目が集まるが、馬具によって頼朝行列など本祭の重要性を再認識するきっかけにしたい」と話した。
指定文化財の一部は神社社務所で展示しているが、現在は収蔵品の公開は予定していない。
【加藤広宣】
社務所で一部展示する大河内松平家の家紋入りの馬具
昭和40年代頃の頼朝行列の「十騎」(吉田神社提供)