豊橋商工会議所の神野吾郎会頭は10日の定例記者会見で、豊橋市の長坂尚登市長が契約解除の方針を掲げる新アリーナ計画について語った。約5年の検討と議論を経た現計画の中止方針に、神野会頭は「社会は信頼に基づいている。トップの交代で契約をひっくり返す手法は、単なる経済的損失以上に市や市民に対する外部からの信頼が損なわれる恐れがある」と警鐘を鳴らした。
会見では佐原光一元市長が打ち出し、浅井由崇前市長が白紙に戻して再検討を加えた新アリーナ計画についての経緯を振り返った。
その中で神野会頭は「佐原さんの提案は、運営事業者の動向なども踏まえて懸念が残った。浅井さんはそれを建設の是非から白紙に戻し、3年かけた再検討で結果的に豊橋公園が最適と結論付けた。さらにアリーナ単体ではなく、老朽化した武道館やテニスコートなどの再整備を含め、防災拠点とする東側エリアの一体的な再整備とした」と評価した。
こうした経緯を踏まえて「市長選では当時の浅井市長に『うそつき』という批判が出たが、そうは思わない。市政運営の手法に沿って施策を進めたまでだ。選挙戦略としての現職批判だろうが『うそつき』という批判が反対票の後押しとなったのは残念だ。SNSを含むメディアで断片的な情報が独り歩きし、賛成派の近藤喜典さんと票を分散させてしまったのも不幸だった」と振り返った。
その上で「トップが変わったから『それが民意だ』として結んだ契約を解除してしまえば、まちや市民への信頼が損なわれてしまう。企業でもそんな強制的な判断はありえず、経済的損失以上に悪影響を及ぼしかねないことだ」と指摘した。
市議会では12月定例会で市長専決だった契約解除も議会の議決要件に盛り込む条例を可決し、今月15日の公布期限が迫っている。計画継続を求める請願への市長回答、新年度予算の発表も控えるなど、市長と市議会を取り巻く状況は政局化しつつある。
神野会頭は「あとは民主主義のプログラムで進むしかない。地方自治は市長と議会がリーダーシップをとる建付けになっているはず。現状では市長公約を実現させるための施策が詰んだ状態にあるのでは」と分析し、市議会とより民主的な解決策を求めた。
また「学校給食費の無償化でも最初は議会の大多数が反対したが、話し合いから徐々に妥協点を見つけ、最終的には負担半減に至った。今回は議会への打診もなく、着任早々に契約解除の手続きを指示したことで議会の反発を招いた」との見解を示した。
新アリーナの必要性について神野会頭は「人口減少や人手不足など経済環境が変化する中、製造業に続く新たな産業軸が不可欠だ。三遠ネオフェニックスがコンテンツとして育つ中、新アリーナを核にした計画の中止は将来の成長のきっかけを放り出すようなものだ」と説いた。
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愛知県田原市出身。高校卒業後、大学と社会人(専門紙)時代の10年間を東京都内で過ごす。2001年入社後は経済を振り出しに田原市、豊川市を担当。20年に6年ぶりの職場復帰後、豊橋市政や経済を中心に分野関係なく取材。22年から三遠ネオフェニックスも担当する。静かな図書館や喫茶店(カフェ)で過ごすことを好むが、店内で仕事をして雰囲気をぶち壊して心を痛めることもしばしば。
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