漬物製造が許可制、出荷やめる農家も

2024/06/07 00:02(公開)
漬物の販売コーナー=道の駅田原めっくんはうすで
 食品衛生法改正で6月から漬物製造が保健所の許可制となった。生産者は厳しい衛生基準を満たさなければ販売できない。農業が盛んな東三河でも収穫した野菜などを自家製漬物として販売する人も多かった。基準を満たすための設備投資もかさみ、回収の見込みが立たず製造をやめる農家も出ている。
 法改正に伴い、漬物のほか水産製品、液卵、瓶やパウチなど密封包装食品などの製造には許可が必要になった。改正前の2021年6月以前から製造していた事業者には今年5月末まで3年間の経過措置期間を設けた。
 許可事業者は国際基準の「HACCP(ハサップ)」に沿った衛生管理が義務付けられる。さらに専用加工施設を住宅と分離して台所の兼用を禁じている。水道水は指で触れないレバー式や自動の蛇口を設け、トイレと手洗い場を分けるなど保健所の許可基準を満たす必要がある。
 改正前は多くの農家が副収入源として、地元の道の駅などで自家製漬物を販売していた。新たな設備投資を伴う法改正の影響で、道の駅でも商品の出荷をやめてしまう農家も現れた。
 JA豊橋などが「道の駅とよはし」で運営する産直店「あぐりパーク食彩村」でも、法改正前には30軒近くが漬物を販売していたが2~3軒まで激減した。大半の生産者が高齢者で、設備投資の回収見込みが立たずやめてしまったという。
 新城市内の梅農家は自家製の梅干しの出荷をやめた。改修費が100万円以上と高額になるためだ。生産者の60代男性によると「塩や容器などの材料代高騰もあって断念した」と語った。余った青梅は近隣の酒蔵や海外へ出荷するという。
 一方、田原市の「道の駅田原めっくんはうす」で販売する冨田ひで子さん(72)は、自宅敷地内に建物と新たな製造設備を導入。13年頃から梅干しと大根のぬか漬けを販売する。12月以降に販売する大根のぬか漬け(1本150円)は1日40本も売り上げる人気でリピーターも多い。
 冨田さんは「販売継続の問い合わせや要望が相次ぎ、夫の協力で続けることにした」という。保健所の検便への協力など従来にはなかったさまざまな義務を果たしつつ生産を続けるという。
 新城市海老で梅の加工製造を営む近藤美紀さんは今年5月に漬物製造業の許可を受けた。既存の加工場の蛇口や洗い場を改修した。近藤さんは「収穫量の8割超を加工品にしていたため」だという。
 豊橋市に住む大江晃正さん(48)も海老地区で義父母の営んだ梅の加工場を改修した。新規参入のため費用はクラウドファンディングで調達。5月下旬に保健所の審査を受けた。大江さんは「産業として維持させつつ、きれいな景色の中で梅干しを食べる文化も残したかった」と語った。
【安藤聡、加藤広宣】
改修を終えた大江さんの梅干し製造施設=新城市海老で(提供)
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