【インタビュー】「負けヒロインが多すぎる!」の生みの親・雨森たきびさん 「好きな場所で育ってほしい」

2024/06/11 00:00(公開)
著者の雨森さん

 豊橋市出身でライトノベル(ラノベ)作家の雨森たきびさんは、小学館「ガガガ文庫」で豊橋を舞台にした作品「負けヒロインが多すぎる!」(マケイン)を手掛ける。7月からはアニメ化されるなどの人気ぶりだ。作家になろうと思ったきっかけ、マケインの誕生秘話、豊橋を舞台にした理由などを聞いた。

 

 -ラノベとの出合いは。 

 ◆中学の時に友達に誘われて読んだのが最初です。ストーリー展開が面白かった。その後、学校で友達と感想を言い合うのが楽しみでした。昔から、自分の面白いことを誰かと共有するのが好きでした。 

 

 -本を書くようになったのはいつですか。 

 ◆高校の時に書き始めました。大学の時、文芸部の仲間と一緒にコメディーの短編小説を書いていました。コピー機で印刷するなど手作りで、部員同士で読み合って遊んでいました。懐かしい思い出です。

 

 -大学卒業後、事務職に就いたと聞いたのですが、作家になりたいと思ったのは。

 ◆数回公募に出したのですが、1次選考で落ちてしまって、通用しないと感じました。諦めたわけではないですが、社会人になって仕事が忙しくて、文章を書くことが自然となくなってきました。

 

 -40代前半で作家を目指そうと思ったのは。 

 ◆残りの人生を想像した時、「今できることをやりたい」と考えました。映画鑑賞やスポーツ観戦はいつでもできますが、体力や頭の回転の速さが必要な作家はそうはいきません。仕事に余裕が出てきた今がチャンスだと感じ、若い頃の夢をもう一度追いかけようと決意しました。

 

 -デビュー作「マケイン」の誕生秘話を教えてください。 

 ◆「マケイン」は、公募用に作ったうちの3作目。数年前のアニメで見た青い髪の子が「負けヒロイン」みたいだと感じたこと。その子がずっと恋愛に負け続けるのですが、自分の気持ちに向き合いながら、もがく姿に感動しました。その後、恋に破れるキャラクターを描きたいと思い、マケインを思い付きました。 

ヒロインの八奈見杏菜 Ⓒ雨森たきび・いみぎむる/小学館「ガガガ文庫」

 -第15回小学館ライトノベル大賞「ガガガ賞」受賞までの経緯を教えてください。 

 ◆昔から小学館のラノベ「友崎くん」「俺ガイル」などのラブコメ作品を読んでいたこともあり、小学館に応募しようと決めました。最初は14回に応募予定でしたが、選考が厳しいと聞き直前で辞退しました。何度も書き直して応募しました。受賞が決まった時は「まさか自分が」と夢のような気持ちでした。

 

 -作品を書くときに、最初に意識したことは。 

 ◆登場人物の名前や設定、役割を決めた後、それぞれの人物像に合ったストーリーを考えるという手順で書いています。キャラがストーリーに流されないように意識しています。

 

 -思い入れのある登場人物は。 

 ◆メインヒロインの八奈見杏菜です。男性から見て、女性の分かりにくいところを盛り込んだキャラを作ろうと。良き相棒の温水和彦との関係性が作品の鍵になります。

 

 -最も思い入れのあるシーンはありますか。 

 ◆1巻の八奈見の「負けっぷり」です。同級生で幼馴染の男子生徒に振られてしまうのですが、1人の人間として悩み苦しむ姿を描きました。「マケイン」らしさを伝えるために、あのシーンは絶対に必要でした。

 

 -地元豊橋を舞台にした理由は。 

 ◆自分の好きな場所でキャラが育ってほしいというわがままを形にしました。モデルにした時習館高校は、「特別な人が行く学校」というイメージで憧れをずっと持っていました。 

舞台となった時習館高校

 -現在住んでいる九州や大学時代の北陸、東京などと比べて、豊橋はどんなまちですか。 

 ◆離れてみてから魅力に気付くまち。気候も温暖で食べ物もおいしいので過ごしやすいです。電車1本で各都市に出られます。最近、いいまちになってたと特に感じます。

 

 -作中に出てきた中で思い入れのある場所は。 

 ◆向山公園と蒲郡市の竹島水族館です。向山は友達や家族とよく釣りをして楽しかった記憶があります。水族館は幼少期、親と一緒に行った思い出があります。アシカショーやタカアシガニの展示など、当時と変わらない姿を作中で書けてうれしいです。

 

 -7月のアニメ放送に向けて、今の気持ちは。 

 ◆皆さんと多分同じ感覚で、視聴者として楽しみにしています。今回は、原作を大切にして制作してくれていますので、登場人物がどう動くのかが楽しみです。キャラが大きな世界に羽ばいたようで、うれしいです。

 

 -最後にファンに一言。 

 ◆これからも、皆さんが読んで楽しくなる作品を書けるように頑張ります。温水君の友達になってあげてください!

 

 -ありがとうございました。

第6巻で出た竹島水族館 ©雨森たきび・いみぎむる/小学館「ガガガ文庫」
実際の竹島水族館

あまもり・たきび

豊橋市生まれ。高校卒業まで同市で過ごした。高校で小説の執筆を開始。北陸の大学に進学し、文芸部に所属していた。大学卒業後は仕事との兼ね合いで執筆活動を休止していたが、かつての夢を追いかけようと決意し、執筆活動を再開した。2020年の第15回小学館ライトノベル賞では「俺はひょっとして、最終話で負けヒロインの横にいるポッと出のモブキャラなのだろうか」でガガガ賞を受賞し、21年7月に同作を改題した「負けヒロインが多すぎる!」でデビューした。恋愛で相手に振られた経験のある女の子「負けヒロイン」の挫折や成長などを描く青春ラブコメ。 

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北川壱暉

 1998年浜松市生まれ。昔からの夢だった新聞記者の夢を叶えるために、2023年に入社した。同年からスポーツと警察を担当。最近は高校野球で泥だらけの球児を追いかけている。雨森たきびさん(作家)や佐野妙さん(漫画家)らを取り上げた「東三河のサブカルチャー」の連載を企画した。読者の皆さんがあっと驚くような記事を書けるように日々奮闘している。趣味はプロ野球観戦で大の中日ファン。

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