香港コンベンション&エキシビション・センターで7月16~22日に開かれたアジア最大級のブックフェア「香港ブックフェア」に豊橋市出身の面師、面司三世如意ノ坊北沢美白さんが登場した。100人超の前で能面制作や日本文化に関する講話をした。
北沢さんは面制作や講演、プロデュースなど多方面で活躍。近年は豊橋の安久美神戸神明社で国重要無形文化財「豊橋鬼祭」の神面奉製を6年にわたり手掛けた。
香港ブックフェアは世界各地の良書が集まる一大イベントで、毎年多くの読書愛好家らが訪れる。北沢さんは地元大手出版社「商務印書館」主催の文化対談にゲストで招かれた。李韡玲さん著「美麗的心靈,不平凡的人生」の新書出版記念で、李さんがMCを務め、同書で紹介された人たちがトークした。北沢さんは面司としての生活が掲載されている。
香港で雑誌編集長をしていた李さんは定期的に日本を旅行、2018年に京都であった北沢さんの個展に立ち寄った縁で交友が始まった。年1~2度、李さんが嵐山の自宅兼工房を訪れ能面制作への造詣を深め、自身の連載コラムや雑誌「亜州週間」に北沢さんの仕事について掲載していた。家族ぐるみの交流があり、李さんの来日時は北沢さんが潔斎食などの手料理でもてなし、今回は李さん宅で北沢さんが手料理の振る舞いを受けたという。
会場では李さんが友情への感謝の言葉とともに北沢さんを紹介。北沢さんは李さんの丁寧な取材と、新書を通し能面師の仕事ぶりと日本文化を広く発信する機会を得たことに感謝した。そのうえで日本から持参した「猩々(しょうじょう)」「小面」の紅白の能面を掲げた。李さんは北沢さんの厳格な私生活にも触れ、面作りの偉大さを語った。北沢さんは参籠時の潔斎食について、儀式的側面と人体に合理的にできている面を解説し、先人たちへのリスペクトと伝統を守る重要性を説いた。フェアのテーマが「食文化」とあって飲食関係者も多く、会場は大いに盛り上がった。
「著書で私の作品や豊橋での参籠奉製を記していただいたので、皆さまが労いの言葉を多数かけてくれてとてもうれしかった。各分野、素晴らしい功績のある皆さまと一緒に登壇できたことは身に余る光栄でした。これを機に新たな交友が始まったことも今回の成果だと思います」と振り返った。
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愛知県豊橋市生まれ。大学卒業後、校閲記者として入社。1年後に報道記者に転身した。2020年から報道部長。芸術、福祉、経済・奉仕団体などを担当する。趣味は、かなりジャンルに偏りのある読書と音楽鑑賞。思考のそっくりな一人娘と趣味を共有している。
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