逆境を好機に豊橋のカラークラフト
空き家問題に歯止めがかからない。賃貸物件の経営代行など営むJPMC(東京都千代田区)は、全国約1400の不動産関連事業者と連携し、賃貸住宅の質の向上を進めている。豊橋市上伝馬町の賃貸再生事業「カラークラフト」もその一つ。昨年1年間のリフォーム棟数が全国の協力企業の中で最も多かったとして、表彰された。地方都市の賃貸住宅産業の課題を取材した。
―受賞おめでとうございます。率直な感想を教えてください。
◆先月、札幌市であった全国大会の表彰式に呼んでいただき、とてもうれしかったです。賃貸物件を建てる、維持する、リフォームしてまた住んでもらう、そして解体する。最初から最後までお付き合いする賃貸住宅の「かかりつけ医」を目指してきた結果だと思います。
―全国1400社で1位。都市部の企業に勝つのは難しいのでは?
◆それは間違いありません。豊橋市は人口37万人、賃貸物件は7300棟しかありません。都会と比べると市場規模は確かに絶対的に不利です。しかし廃墟のようだった賃貸アパートを満室にしたとすると、地域の方々にすぐ認知していただけるなど宣伝効果が都市部より高い可能性はあります。地方都市なりの戦い方がありますね。
―これからどんな取り組みを?
◆賃貸物件の所有者が高齢化し、建物も老朽化しているのは全国の地方都市が抱える共通する課題です。うまく承継できなければ、地方都市で若い働く世代が住む場所を選ぶことができなくなり、地方都市の人口の減少につながりかねません。人口の減少、経済規模の縮小傾向は今後数十年、変わりません。このピンチは実はチャンスです。賃貸住宅を建てる。長持ちさせるためのメンテナンスをする、リフォームをする、解体する、また新たに建てる。この循環の仕組みをいかに環境負荷なく続けていくかが課題です。
賃貸住宅の所有者や将来の居住者のために良質な仕事をすることが、全国の地方都市が共有する空き家問題の解決に資すると信じて仕事をしていきたいです。
総務省の調べによると、この20年で空き家の総数は約849万戸と1・5に増加。このまま経済的損失だけでなく、景観の悪化、犯罪やごみの不法投棄の誘発、衛生の悪化など多くの問題を引き起こす懸念があるという。
【本紙客員編集委員・関健一郎】
オーナーの悩みとその物件の社会的意義を考え、最適解を探すという山本社長㊨=豊橋市で