13日に開幕した大阪・関西万博で、豊橋市の有限会社が共同開発したエコな街路灯が採用された。自ら発した光を再利用する「光循環街灯」だ。「博覧会で見てもらい、世界に普及させたい」と意気込んでいる。
会社は豊橋市前田南町2の照明器具開発・販売「ライトプラン」。商品名は「ソーラー街路灯ループ」で万博会場と水路をつなぐ夢洲桟橋に9基が設置されている。高さ3・5㍍、重さ110㌔。
取締役の入江政孝さんによると、LEDの普及により、外部電源を必要としないソーラー街路灯が広まった。しかし、長雨や曇天時が続くと夜にLED灯が消えてしまうという課題があった。
ソーラーループの基本構成は、LEDライト、太陽光発電パネル、バッテリー、チャージコントローラー、ポール本体の5点。一般的なソーラー街灯とは異なり、LEDライトが上部に、その下に太陽光発電パネルが設置されている。この独自の配置が、日中に太陽光で蓄電し、夜間はLEDライトが発する光を再び太陽光発電パネルで捉えて発電・給電する「光循環システム」を可能にする。入江さんは「理論上は半永久的に点灯し続ける」と語る。天候に左右されず365日点灯し、化石エネルギー消費量と二酸化炭素排出量をゼロに抑える。
数年前、みよし市三好町のプラント電気設備工事「久米電機」が持っていたシステムに入江さんが出合い、共同開発してきた。ライトの下に太陽光発電パネルがある構造のため、下部が陰になってしまい光量が落ちることがある。そこでパネルの形状などにさまざまな工夫を凝らし、普通の街路灯に劣らない明るさを確保できた。
2021年頃にはほぼ完成。県内や沖縄県糸満市で実証実験を続けたが夜間にライトが消えるようなことは一度もなかった。特に23年の台風6号は1週間にわたって沖縄本島に深刻な影響を与え、各地で長時間の停電が相次ぐなどしたが、ソーラーループだけは光り続けていたと地元の人が証言したという。風速55㍍の暴風にも耐えきった。
最後の実験は昨年9月から大阪産業局主導で大阪市のアジア太平洋トレードセンターで実施した。3カ月の実験で、性能と信頼性ともに高く評価された。米国特許も取得している。
創業者の入江さんは、元々金融業界の出身。1980年代後半に地球温暖化に関する記事を目にしたことが、省エネルギー分野への転身のきっかけとなった。「社会に貢献できる機会を求めて」起業したという。
だから、このシステムを世界各地の電気インフラが未整備な地域で活用したいと考えている。国内向けには頑丈なポールで設置するが、途上国では木の上や柱の上に取り付ければ導入コストを大幅に下げられる。入江さんは「電柱や電線を引く必要のない完全独立型なので、満充電のバッテリーを付けて山の中に置けば、その夜から点灯し続ける。電気インフラのない地域には適した製品だ」と強調する。日本貿易振興機構(JETRO)と交渉している。
さらに、近年は激甚化している災害時に活躍することが期待される。人々が集まる公園や避難所に設置されていれば、停電時でも明かりを確保できる。「そこに避難できる」という目印になる。USBポートも搭載可能で、近年の災害時の課題となっているスマートフォンへの充電もできる。
また、大型商業施設や商店街への設置も視野に入れる。ライトプラン代表の森成洋子さんは、商品の形をあしらったソーラーループのデザインを提案した。店舗前の路面でスペースを確保できれば電線を引かずに広告灯となる。
入江さんらはこの取り組みを広く知ってもらうことで、環境負荷の低減や地域課題の解決、環境意識の向上につなげたいと考えている。
問い合わせはライトプラン(0532・54・0919)へ。
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1967年三重県生まれ。名古屋大学卒業後、毎日新聞社入社。編集デスク、学生新聞編集長を経て2020年退社。同年東愛知新聞入社、こよなく猫を愛し、地域猫活動の普及のための記事を数多く手掛ける。他に先の大戦に詳しい。遠距離通勤中。
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