東三河で、学生ならではの視点から地域の未来を切り開こうとする若者がいる。豊橋技術科学大学大学院に通う岩隈依辰さんと大前歩さんもそうだ。二人は、学生生活での「情報の非対称性」を解消するため、ウェブサイト「キャンパスコンパス」を開発、運営する。法人化も果たし、その挑戦を加速させている。
情報の非対称性を解消し「学生の選択肢を増やす」をビジョンに掲げる情報サイトだ。大学生活で多くの学生が悩む履修登録や研究室選びについて、先輩のリアルな評価や情報を集約。学生が後悔のない選択をするための羅針盤となることを目指している。さらに、地域の企業が掲載するアルバイトやイベント情報も扱い、学生と社会をつなぐ役割も担う。
「人に影響を与えたいという思いがありました。学生の自分にとって最も身近な存在、つまり学生の役に立ちたいと思ったのが始まりです」と、代表の岩隈さんは語る。きっかけは、豊橋の起業家育成プログラム「火―Okoshi」。参加後に自身の履修登録での苦労を元に、このプロジェクトは始動した。
当初は一人で開発から運営まで行っていた岩隈さん。しかし、企業へのアプローチや、ユーザーである学生が本当に求める機能は何かを考え続けることに限界を感じていた。そんな時、岩隈さんの熱い思いに共感し、活動に加わったのが大前さんだ。
「岩隈が解決しようとしている課題に強く共感しました。私自身、地方出身で、住む場所によって得られる情報が大きく違うことなど情報の非対称性には常々課題を感じていた。彼のビジョンと、それを本気で実現しようと一人で奮闘してきた熱意にひかれ、一緒にやることを決めました」と振り返る。
開発を得意とする岩隈さんと、営業や企画を担う大前さん。強力なタッグが生まれたが、すぐに新たな壁に直面する。前例のないサービスをビジネスとして成立させることの難しさだ。「企業に価値を感じてもらえるビジネスモデルの設計や、多くの人に知ってもらうマーケティングは今も二人で模索している最中です」と大前さんは明かす。意見を戦わせながらも、チームとして成長する日々を送る。
今年3月、二人は「合同会社キャンパスコンパス」を設立した。その目的は「信頼」と「継続性」の獲得だ。大前さんは「法人格を持つことで、大学や企業、そして学生からの信頼を得たかった」と語り、岩隈さんも「卒業後も続けるという僕たちの意思表示です」と力を込める。その覚悟は着実に実を結び、企業との連携がスムーズになるなど、活動の幅は大きく広がりつつある。
今後の目標について岩隈さんは「まずは技科大生の8割以上が利用するサービスにしたい。多くの学生に多様な選択肢を提示することで、彼らの可能性を広げたいです」と語る。大前さんは「履修や研究室選びといった学内の重要な選択を支えるのはもちろん、今後は企業との連携をさらに強化し、学生が社会とつながる機会をもっと増やしていきたい」と、その先を見据える。
学生が抱えるリアルな課題から生まれたキャンパスコンパス。二人の挑戦は、東三河の学生たちの未来を豊かにするだけでなく、地域と若者を繋ぎ、新たな活力を生み出す原動力となるに違いない。
いわぐま・いしん
豊橋技科大大学院工学研究科電気・電子情報工学専攻。修士2年。合同会社キャンパスコンパス代表
おおまえ・あゆむ
豊橋技科大大学院工学研究科電気・電子情報工学専攻。修士2年。合同会社キャンパスコンパス営業担当
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Lirem創業者。2000年1月11日生まれ。山口県宇部市出身。2020年3月、宇部工業高等専門学校を卒業、同年4月、豊橋技術科学大学3年で編入、在学中の2021年10月にLiremを設立して代表取締役に就任。現在は起業家支援事業や事業会社のイノベーション促進に向けた研修プログラムを提供する。「火―Okoshi」も運営する。
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