全国高校野球選手権大会は第6日の11日、阪神甲子園球場で2回戦があり、春夏通じて初出場の豊橋中央は日大三(西東京)に2対3で競り負けた。試合終了の合図とともに、両校ナインが整列。主将の砂田隆晴選手(3年)の頬には大粒の涙が伝っていた。
2対2で迎えた七回、1死二、三塁で打席には砂田選手。「最初のストライクから振りに行く」と決めていたが、初球に手が出なかった。次の変化球をたたくも、浅い中飛。無得点に終わった。八回に勝ち越しを許し、試合終了。「打つべき球を振れなかった。4番の差が出た」。試合後、さまざまな思いが交錯し、涙が止まらなかった。
砂田選手は1年夏から中軸を任されたが、その後は打撃成績が上向かず、2年からはベンチ外。昨夏の県大会もスタンドから見ていた。準々決勝で敗れ仲間が泣きじゃくる姿に「何もできない自分が腹立たしかった」。その後の練習で「自分勝手ではなく、チームのために」と励む姿に萩本監督は決断した。「お前が引っ張れ」。新チームを任された。
冬は「限界を越えろ」を合言葉に猛特訓。今春の県大会予選では、強豪の豊川に6対0で勝利し、日々成長していった。
そして6月、夏の大会にベンチ入りする20人が発表された。だが、一緒に同校の「大山グラウンド」で1年春から汗を流した3年生数人の名前がなかった。応援団長の高橋大翔さんもその一人。「勝負事で仕方ないとは分かっているが」と砂田選手。勝負の厳しさとベンチ外の苦しさの両面をを分かっているからこそつらかった。
夏の県大会優勝後、萩本監督が選手たちにこう呼び掛けた。「甲子園は選手次第」。甲子園が夢から現実に変わり、浮足立っていると砂田選手も感じていた。「愛知大会は萩本監督についていくだけだったが、甲子園は自分たちが引っ張らないと」。選手だけで話し合い、「国体に出場する」と目標を決めた。甲子園でベスト8以上に進出すれば、秋の「国民スポーツ大会」に出場できる。萩本監督から「3年全員を出す」と伝えられたのも後押しした。
高橋さんら応援団は少数精鋭。県大会から8試合太鼓を持って、メガホン片手に声を張った。「あの応援がなかったら甲子園に出ていない」と感謝する。だが、目標には届かなかった。試合後、ベンチ裏で高橋さんに「ごめんね」と涙ながらに伝えた。それでも高橋さんは「野球になると馬鹿になれる最高のチーム。甲子園で素晴らしい姿を見せてくれた。悔いはない」と唇をかみしめた。
砂田選手が主将としての責任を背負い、髙橋さんが応援団長として全力で支える。この信頼関係が豊橋中央の快進撃の一つになった。
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1998年浜松市生まれ。昔からの夢だった新聞記者の夢を叶えるために、2023年に入社した。同年からスポーツと警察を担当。最近は高校野球で泥だらけの球児を追いかけている。雨森たきびさん(作家)や佐野妙さん(漫画家)らを取り上げた「東三河のサブカルチャー」の連載を企画した。読者の皆さんがあっと驚くような記事を書けるように日々奮闘している。趣味はプロ野球観戦で大の中日ファン。
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