飼育動物が自然に近い行動を取れるように飼育環境に工夫を凝らし、幸福な暮らしを実現する「環境エンリッチメント」。欧米では既にトレンドになっており、国内でもその取り組みは増えつつある。豊橋市向山大池町のペット商品販売「トムキャット」は、動物園にも「おもちゃ」を取り入れて動物の幸福度を向上させようと、米国製の大型遊具「アニマルサファリグッズ」を国内で初めて発売し、「豊橋市総合動植物公園(のんほいパーク)」との実証実験に取り組んでいる。
「環境エンリッチメント」は、「種の保存」が動物園の役割として大きくなった1970年代の欧州で生まれ、日本では90年代半ばから旭山動物園をはじめ園関係者の間で広まった。だが40年以上たった現在も、限られたスペースや予算などの都合で、動物が暮らしやすいように施設改修や道具購入などが思うように進まない園も多い。その課題に比較的安価に購入できる「おもちゃ」でアプローチしようと考えたのがトムキャットだ。
動物園のおもちゃで探索、採食、運動、知的刺激など動物たちに本来の行動を遊具で引き出すことはできないだろうか。昨年6月から実験が始まった。豊橋総合動植物公園の協力を得て、おもちゃを1カ月貸すことになった。獣医師の吉川雅己さん(52)は「今まで職員が竹や木、塩ビ管などの市販されている材料を使って手作りしていたが、限られている人員と時間で限界がある。おもちゃでいつもと違った反応が見られれば」と賛同した。道具は、全国で唯一同社が扱っている米国メーカーの「デザート・プラスティックス」社の製品「ワイルドライフ・トイ・ボックス」と、「ホースマンズプライド」社の製品「ジョリー・ペット」。揺れるおもちゃ「チプシートム」や鈴入りボール「ジングルボール」、鏡付きの「ロッキールー」、98㌔ある「ボール」などで、ライオンやホッキョクグマ、ゾウ、サーバルキャットなど9種類の動物に試した。
すると、猿は鏡付きのおもちゃには最初は警戒していたが、数分後には鏡をとんとんたたくなどして関心を示した。ゾウにはボールやタイヤ、ツキノワグマには揺れるおもちゃを試したところ、かみついたり転がしたりしていた。さらに、長いロープにボールのついた「ジョリーツリータッガー」に反応を示したのは猫の仲間で驚異のジャンプ力を誇るサーバルキャット。このおもちゃを柵に取り付けたところ、吉川さんが「ボールに反応して数㍍ジャンプしていたのには驚いた」と本来の行動を引き出すことに成功した。
吉川さんから「遊んでいるように見えて餌を探す行動をすることが多い。餌がおもちゃから飛び出る仕組みがあれば飽きる心配がない」と助言を受け、同社は新しいおもちゃの仕入れを検討しているという。
名古屋市の東山動物園や埼玉県東松山市の埼玉こども動物自然公園など四つの園で導入されている。担当の杉山寛光さんは「頑丈に作られているため壊れる心配がなく、バリエーションが豊富で好評だ」と話す。青木秀泰社長は「動物が生き生きとしていたのが印象的だった。おもちゃを使うことで施設改修よりも安価に飼育動物にとって楽しい空間をつくれる。全国の園で広めていきたい」と展望を語った。
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1998年浜松市生まれ。昔からの夢だった新聞記者の夢を叶えるために、2023年に入社した。同年からスポーツと警察を担当。最近は高校野球で泥だらけの球児を追いかけている。雨森たきびさん(作家)や佐野妙さん(漫画家)らを取り上げた「東三河のサブカルチャー」の連載を企画した。読者の皆さんがあっと驚くような記事を書けるように日々奮闘している。趣味はプロ野球観戦で大の中日ファン。
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