【連載】診療室の午後〈13〉脳卒中に気をつけて|赤岩病院内科医

2025/09/25 00:00(公開)
脳卒中に気をつけて

 来週からは10月です。本来は秋深まるはずの10月ですが、まだまだ暑いので早く秋深まってほしい10月でもあります。個人的には今年も残り3カ月になってしまうことに少し焦りを感じていますが、読者の皆さんの最近の健康状態はいかがでしょうか?

 

 10月と聞くと、秋の涼しさを思い浮かべる人も多いとは思いますが、しばらくは暑さが続く可能性も高く、夏の名残を色濃く感じるかもしれません。そしてその暑さと、秋特有の朝晩の寒さ、つまりは寒暖差が実は血管に大きな負担をかけていることをご存知の人も多いと思います。

 

 特に1日の内での気温差が10度以上になると、血管に大きな負担がかかるといわれています。血管への負担とは血圧であり、血圧の変動が激しくなればなるほど、血管が破れたり、閉塞してしまう確率が高くなり、それが脳で起こってしまった状態が脳卒中です。

 

 脳卒中とは主に脳出血と脳梗塞のことで、日本人の死因第4位であり、国内に脳卒中で治療中の患者数は188万人、毎年30万人ほどの新規発症患者がいると推測されており、日本人の4・3人に1人は一生の内に一度は脳梗塞になる、と推測されている大変身近な疾患でもあります。

 

 脳卒中の発症により、脳が障害を受けると、突然の激しい頭痛やしびれ、ろれつが回らないなどの症状が最初に現れ、その後治療に成功したとしてもまひや運動障害が残り、介護が必要になる可能性が非常に高くなります。特に脳梗塞に関しては危険因子として「高血圧」「高脂血症」「糖尿病」「喫煙」「大量飲酒」「心疾患」があり、感染症や脱水症、不整脈の発症を契機に脳梗塞を発症するケースが大変多いため、普段から減塩、運動、禁煙、水分摂取励行などの生活習慣を改善することが予防の第一歩となります。

 

 また脳梗塞は認知症とも深い関係があり、脳梗塞が主な原因である「脳血管性認知症」は認知症全体の20%程度を占めており、アルツハイマー型認知症の次に多い疾患でまひや運動障害だけでなく、物忘れや判断力の低下、不安定な精神状態の原因にもなりえます。

 

 「こんなに頑張っているのに、元の体には戻らないね」。脳梗塞でリハビリ中の60歳代前半の男性患者は主治医である僕に言いました。「もう少しで定年だったし、その後は奥さんといろいろな場所に旅行に行くつもりだったのに…」。汗か涙かわからない濡れた顔をうつむいて隠しながら、ため息交じりにこぼした言葉が胸に刺さりました。終わりのないリハビリが本人にとってどれだけ大変なものなのか、病気にならないとわかりません。

 

 10月は日本脳卒中協会が定める脳卒中月間です。そして10月29日は世界脳卒中協会が定める「世界脳卒中デー」でもあります。一人でも多くの人が脳卒中にならないように、理解を深めてもらうための誰でも参加可能な健康教室(無料)が11月18日午後に赤岩病院で開催されます。脳梗塞の予防からリハビリまで、実際に患者が使用しているリハビリ室で開催しますので、ご興味のある人はぜひとも電話にて赤岩病院までお問い合わせください。

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