高市早苗首相の台湾有事に関する国会答弁を巡り、中国外務省が国民に呼び掛けた日本への渡航自粛の影響が東三河に出始めている。蒲郡市内のホテルでは中国人客の大量キャンセルなどの動きもあり、書き入れ時となる来年2月の春節(旧正月)を控えるなか、長期化に不安が広がる。
日本政府観光局によると、今年1月から9月までの中国人訪日客は前年同期比42・7%増の748万7200人に達し、昨年1年間の698万人を既に上回った。豊橋市ではこの傾向は顕著だ。中国人宿泊者数は昨年4~9月の2085人から今年には3万1230人へと約15倍に急増し、訪日外国人のうち、中国人が58%を占める。蒲郡市でも昨年度は外国人宿泊者の83%を占めた。
一方、蒲郡市三谷北通2の「蒲郡ホテル」では、16日以降に宿泊者数の半数を占める中国の団体客からキャンセルの連絡が入るようになり、23日現在で2000人を超える。既に航空便などの手続きが確定していた直近のツアーも、旅行会社から無料でのキャンセルを求められ、竹内恵子社長(71)は「異常な事態だ」と肩を落とす。
今回の事態は初めてではない。2012年に日本政府が尖閣諸島国有化を決めた際にも、中国政府が日本への渡航を控えるよう注意喚起し、訪日客が急減した。竹内社長によると、以前から国内需要の拡大に努めてきたため、現状では「国内客の予約も多数入っており、経営が立ち行かなくなるという状況ではない」という。ただ、約30年前から現地に赴き、10年の上海万博ではホテルや蒲郡の魅力をPRしたり、現地の留学生を受け入れたり民間交流を進めてきただけに、「中国人は良い人ばかり。平和にやってほしい」と願う。
約20年前に来日した華光中日ビジネス振興協会の華思勉代表は、担当の複数の中日交流プロジェクトは中止を余儀なくされ、顧客の数百万円規模の対中輸出案件も先行きが不透明になったと明かす。「数字上の損失ではなく、多くの人々の仕事や生活と生計を直撃する問題」と訴える。「双方の知恵と理性が必ずや事態を正しい方向へ導くと信じている」と語った。
今後の見通しについて国内旅行関係者は「2カ月くらいで収束するのではないか」という楽観的な見方を示す一方、別のツアーの添乗員からは「2年くらいかかる」という悲観的な声も聞かれ、不透明な状況だ。蒲郡観光関係者は「ビザなし渡航ができなくなると、客の渡航意欲が大きく低下するとともにビジネスにも大きな影響が出る可能性がある」と述べる。豊橋市内のホテル関係者は「春節シーズンまで続かないか不安だ」と話している。
一方、県は21日に中国江蘇省との交流の延期を明らかにしたが、東三河の各市の姉妹交流への影響は限定的だ。豊橋地区日中友好協会の星野隆輝会長によると、豊橋市との友好都市の南通市の子どもたちの書作品を展示する「日中友好児童生徒書初展」が予定されているが、現時点で変更はないという。
愛知学院大法学部で国際法が専門の尋木真也准教授は「政治的問題とは切り離し、1978年の日中平和友好条約で約束した善隣友好の精神に基づく経済・文化関係の一層の発展と交流の促進を、両国民が尊重していくことが重要だ」とコメントした。
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1998年浜松市生まれ。昔からの夢だった新聞記者の夢を叶えるために、2023年に入社した。同年からスポーツと警察を担当。最近は高校野球で泥だらけの球児を追いかけている。雨森たきびさん(作家)や佐野妙さん(漫画家)らを取り上げた「東三河のサブカルチャー」の連載を企画した。読者の皆さんがあっと驚くような記事を書けるように日々奮闘している。趣味はプロ野球観戦で大の中日ファン。
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