豊川高校女子バレーボール部が、来年1月5日に東京体育館(東京都渋谷区)で開幕する「第78回全日本バレーボール高等学校選手権大会(春高バレー)」に、県代表として出場する。3年ぶり2度目の大舞台となる豊川は、大会初日の初戦で京都橘(京都)と対戦する。
県予選では、身長171㌢のエース・井上愛梨選手(3年)らを中心に、初戦の名城大附属、2回戦の西陵、準々決勝の三好、準決勝の岡崎をいずれもストレート勝ちで下し、決勝へと駒を進めた。
しかし、決勝4日前にアクシデントが襲う。副主将の石橋優選手(3年)が右足を骨折。「必ずこの舞台で勝ち切る」と誰よりもコートに立ち続けてきた主軸の離脱に、チームには動揺が走った。それでも、決勝の相手は前回予選で敗れた誠信。悔しさを晴らすには絶好の舞台だった。石橋選手とともに前回大会を経験している主将の水田愛弓(3年)、エースの井上、リベロの小久保妃来(3年)の3選手は、この1年「必ずこの舞台で勝ち切る」という強い思いでチームを牽引してきた。それだけに石橋選手の離脱はつらかったが、「優の分まで春高へ」という思いがチームを一つにさせた。
迎えた決勝当日。試合前、水田主将は「本当に最後だから楽しむだけだよ」と仲間に語りかけ、井上選手も「いよいよだなとわくわくした気持ちになった」と振り返る。大応援団を背に、メンバーがコートに飛び出した。第1セットは21対25で落としたものの、第2セットを25対18、第3セットを25対19で奪い返し逆転に成功。第4セットを22対25で奪われる大接戦となったが、最終第5セットも14対13と両校一歩も譲らない激闘が続くなか、最後は水田主将のスパイクが決まり、15対13で勝利をつかみ取った。最終セットは総力戦となり、豊川の執念が勝った。
スパイクが決まった瞬間、試合終了の笛が鳴り響いた。選手たちはコートで抱き合い、歓喜の叫びと涙の中で互いの肩をたたき合った。スタンドからは大声援が降り注ぎ、チーム全体が喜びと達成感に包まれた。水田主将は「2セット目を落ち着いて取り返したのが大きかった。うれしいのはもちろんだが、永松里加子監督に恩返しできて良かった」と喜んだ。井上選手は「インターハイ県王者としてのプレッシャーがあったが、愛知王者を証明できてほっとした。終盤に足がつってしまったが、周りの選手が決めてくれて、チームのすごみが増していた」と手応えを語った。
初戦の相手の京都橘は、的確にボールをつなぐ「高速立体バレー」を展開する強豪だ。府予選では5年連続の優勝、28回目の全国出場を決めている。特に1年生エースで強打やブロックが持ち味の片岡優選手には要注意だ。豊川は、早いテンポのトスと粘り強いレシーブを主体とした「コンビバレー」で対抗したい。
水田主将は「目標はベスト8。最後の大会なので悔いなく全力で」、井上選手は「自分たちが愛知王者というプレーを見せたい」と意気込んだ。
【主将 水田愛弓】 安定感抜群の努力家
身長164㌢でアウトサイドヒッターの水田選手。最大の強みは「プレーに波がなく、常に安定していること」。永松監督も「勝ちに対するこだわりが格段に強く、自分に厳しい」と評し、人一倍の努力と練習量をこなすことで、チームメートからも一目置かれる存在だ。かつて主将としての重圧から「整理がつかなくなった時期」もあったが、永松監督からの「そんなに抱えすぎなくていいんだよ」という言葉に救われ、チームをインターハイ、春高の県予選の2冠に導いた。
春高予選の決勝では、第1セットを失う苦しい展開の中でも「とにかく楽しむだけだよ」と仲間に声をかけ続け、第2セット中盤での冷静なプレーで逆転の契機をつくった。高校生活最後の舞台に向け、「悔いがないように全力でプレーをやり切りたい」とベスト8進出を誓う。
【エース 井上愛梨】 うまさとパワーで圧倒
チームの得点源として君臨するのは、身長171㌢の絶対的エース・井上選手。豊川の代名詞であるコンビバレーの中で、早いテンポの平行トスと打点の高さを使い分け、パワーで相手を圧倒するプレースタイルを武器とする。インターハイ王者として臨んだ今大会では、周囲からのプレッシャーを感じつつも、「自分たちが愛知の代表である証明をする」という強い決意でコートに立った。
予選決勝では、第4セット中盤、連打の疲労から両足をつるアクシデントに見舞われた。しかし、「自分が万全でない時に、他のスパイカーがカバーしてくれた」と語る通り、仲間の支えにより窮地を脱した。水田主将を「行動で引っ張ってくれる頼りがいのある存在」と信頼する井上選手は、自らの役割を「決めきること」と言い切る。高校バレーの集大成となる春高に向け、持ち前のテクニックとパワーにさらに磨きをかけ、全国の猛者たちに挑む。
【リベロ 小久保妃来】 献身光るムードメーカー
守備の要で、チームを鼓舞し続けるのがリベロの小久保選手。小学校からバレーを始め、中学時代の練習試合見た豊川高校の切磋琢磨する雰囲気に憧れて入学を決意した。1年生の中盤からレギュラー争いに加わり、新チーム発足後は「1枚リベロ」として活躍している。
彼女の役割はプレーだけに留まらない。自らを「ムードメーカー」と称し、「キャプテンが思っていることをわざわざ言わなくてすむように、自分が周りを見る」という献身的な姿勢でチームを支えている。1枚リベロになった当初は不安もあったが、仲間からの「妃来ならできる」という言葉を糧に自己肯定感を高め、練習に励んできた。
春高出場は小学生の頃からの夢であり、予選を勝ち抜いた瞬間は「やってきたことは間違いじゃなかった」と、インターハイの時以上の喜びを噛み締めた。ベスト8という高い目標を掲げ、「チームが一丸となって勝ちにこだわる」ために、きょうも一番後ろから声を出し続ける。
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1998年浜松市生まれ。昔からの夢だった新聞記者の夢を叶えるために、2023年に入社した。同年からスポーツと警察を担当。最近は高校野球で泥だらけの球児を追いかけている。雨森たきびさん(作家)や佐野妙さん(漫画家)らを取り上げた「東三河のサブカルチャー」の連載を企画した。読者の皆さんがあっと驚くような記事を書けるように日々奮闘している。趣味はプロ野球観戦で大の中日ファン。
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