全編を豊橋市内で撮影した本格派アクション映画の第2作「TRAVERSE2―Next Level―」の全国上映が、2月27日に始まる。昨年11月に地元で開かれた完成披露試写会と先行ロードショーは約2週間で400人以上を動員した。同市出身の武道空手家で主演の田部井淳さん(62)らが見せた生身のアクションは、観客を熱狂させた。作品誕生の背景には、豊橋市出身のプロデューサー、近藤和加子さん(56)の「『武道』としての空手を後世に残したい」という情熱と使命感があった。
すべては、近藤さんと主演の田部井さんとの運命的な出会いから始まる。約30年前、銀行事務員だった近藤さんは、電卓をたたく日々に「このままでは何者にもなれず終わっていく」と焦燥感を抱いていた。
転機は25歳の時。同僚の勧めで「空手道豊空会」を訪れ、師範の田部井さんと出会った。手ほどきを受けた初日、伝統に裏打ちされた研ぎ澄まされた技の美しさや迫力に魅了された。田部井さんから「武道空手に打ち込めば絶対に面白い人生になる」と言われ、入門を決断。「師範の生き方や武道への姿勢にほれた」と笑みを浮かべる。その言葉の通り、近藤さんは全日本タイトルを獲得する実力をつけ、道場の事務局長、そして映画プロデューサーとして田部井さんを支える存在となる。
田部井さんは10歳から空手を始め、19歳で上京。千葉真一さん主宰の俳優養成所「ジャパンアクションクラブ」に所属し、「空手映画を作りたい」という夢を抱いていたが、1990年代後半の映画産業の斜陽化で夢は閉ざされた。その後、さまざまなスタイルの空手を修業し、95年に自らの理想を追求するための道場「空手道豊空会」を開設した。
2000年代に入ると、人間形成を目的とする「武道空手」を取り巻く環境はより厳しくなった。子どもの習い事としては、定番競技に比べて優先順位は低く、道場でも小学校卒業後に、部活や受験のために辞める生徒も多かった。東京五輪で競技種目となった「スポーツとしての空手」の台頭で空手人口は増えたが、「武道空手」の良さを残さなければと2人は危機感を抱いていた。
そこで、近藤さんらは「武道の良さを映画で広めたい」と映画関係者にアプローチし、アクション俳優を探していた岡田有甲監督らと出会う。岡田監督は田部井さんの武道の動きに一目ぼれし、18年から映画制作が始動した。
近藤さんがプロデューサーに抜てきされたのは、岡田監督の「豊橋で撮るなら、撮影の交渉は地元の人間の方がいい」という一言からだった。映画の現場は初めての経験で、ロケ交渉では「筋が違うのでは」と断られることも。全国ロードショーにこぎつけたが、新型コロナウイルス禍で中断し、後悔が残った。当時アクション監督だった白善哲さんも「前回でやり残したことがある」とこぼしていたという。そこで昨春、制作陣が再集結。脚本と監督を白善さんが兼任し、「前作を超える」と意気込んで続編の制作が始まった。
前作と異なる女優を起用することになった主人公の娘役のヒロインは、近藤さんがオーディションし、田部井さんが最終的に決めた。重視したのは田部井さん演じる主人公が守る娘として「どれだけ本物の父と娘になれるか」だった。中野咲希さんに会った瞬間「探していたのはこの人だ」と直感したという。
70~80社に協賛金を募り「『応援するぞ』と温かい声をもらった」と近藤さん。撮影も一般社団法人「とよはしフィルムコミッション」の協力の下、豊橋市上下水道局などを舞台に進められた。11月16日の完成披露試写会には300人以上が集まった。近藤さんは「エンドロールにプロデューサーとして名前が出た時ほっとした。皆さんに感謝します」と語った。
作品は敵組織「蠍(さそり)」との死闘から6年後、高梨淳(田部井)と義娘の里菜(中野)が、蠍の魔の手から逃れるため、命を懸けた極限の逃避行と闘いを強いられる状況を描く。
豊橋ケーブルネットワーク「ティーズ」は、2月の毎週金曜日(6日、13日、20日、27日)の午後8時から第1作を放送する。
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1998年浜松市生まれ。昔からの夢だった新聞記者の夢を叶えるために、2023年に入社した。同年からスポーツと警察を担当。最近は高校野球で泥だらけの球児を追いかけている。雨森たきびさん(作家)や佐野妙さん(漫画家)らを取り上げた「東三河のサブカルチャー」の連載を企画した。読者の皆さんがあっと驚くような記事を書けるように日々奮闘している。趣味はプロ野球観戦で大の中日ファン。
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