豊橋市の郷土料理で、今年5月に文化庁の「100年フード」に選ばれた「にかけうどん」。かつおとアジのだしを利かせた甘めのつゆに、麺、かまぼこ、刻み揚げ、青味野菜、花かつおなどを盛る。地元では当たり前の一杯を、外からの視点で見つめ直した「にかけ図鑑」が刊行された。豊橋市を拠点にPR業を営むmocoさん(43)が、同市のBLANKMAG鈴木さんと制作。豊橋市と豊川市を中心に、にかけを提供するうどん店を紹介し、その文化を日本語と英語で伝えている。
「豊橋を離れたことで、地元では当たり前だったものが、実は当たり前ではないと気づいた」とmocoさん。市内の老舗粉問屋「三徳商店」の子として生まれ、高校卒業後に渡米。大学卒業後はファッション業界を経て、都内で約10年間、PRに携わった。独立後、家業の魅力を発信しようと2019年にアンテナショップ「SANTOKU」を開設。21年に里帰りし、家業を手伝う中で、東三河のうどん店ごとに麺が異なることなどを知った。
そこで気づいたのが、にかけうどんの「当たり前すぎる」特殊性だった。「地元では全国区だと思っているけれど、『にかけ』という言葉が通じるのはこの辺りだけ。私自身も大人になってから知った」。今年度には文化庁の「100年フード」に認定され「名古屋のみそ煮込みうどんは郷土料理だと分かって食べるのに、豊橋の人はにかけが全国区だと思っている。それが不思議だと思った」と話す。
「にかけ図鑑」が目指したのは、単なるグルメガイドではない。「うどん屋さんからすれば毎日の当たり前の仕事。それを『カルチャー』という視点で表現したかった」。約3カ月かけて60店舗を取材し、写真や創業年、使用するうどん粉、店舗情報などを収録。日本語と英語を併記した。
タイトルにも工夫を凝らした。「『にかけ特集』などでは流されてしまう。『図鑑』という学術的な言葉とのミスマッチで興味を持ってもらいたかった」。表紙には鈴木さんの発案でうどん粉が舞う情景を採用した。「私は粉が散っていることを特別だと思わない。でも鈴木さんは外から見ているから面白いと思った」と振り返る。
「PRは、何でもないものに自分の力で付加価値を付けられる仕事。今回は、にかけうどんをPRしたらどうなるかをやってみたかった」とmocoさん。スポンサーは入れず、掲載基準は「メニューに、にかけがあるかどうか」とし、取引先かどうかも問わず対象店舗を網羅した。「自分たちがいいと思うものだけを入れたかった。今回は100%自分たちの情熱で作れた。本の売り上げよりも、うどん屋という業種がPRされ、かっこいい仕事だと思われ、次の世代に継承されてほしい」と願う。
「にかけ図鑑」はA5判50㌻、フルカラー。税込み1200円。SANTOKUの店舗と発行元「BLANKMAGBOOKS」のオンラインショップで販売している。問い合わせはSANTOKU(0532・75・4555)へ。
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1998年浜松市生まれ。昔からの夢だった新聞記者の夢を叶えるために、2023年に入社した。同年からスポーツと警察を担当。最近は高校野球で泥だらけの球児を追いかけている。雨森たきびさん(作家)や佐野妙さん(漫画家)らを取り上げた「東三河のサブカルチャー」の連載を企画した。読者の皆さんがあっと驚くような記事を書けるように日々奮闘している。趣味はプロ野球観戦で大の中日ファン。
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