【蒲郡】「幻のそば」入野谷在来を十割で|元JA職員が修業3年経て開店

2026/10/20 00:00(公開)
「寺そば一会」を開いた松山さん=蒲郡市御幸町で
「寺そば一会」を開いた松山さん=蒲郡市御幸町で

 蒲郡市御幸町にこのほど、手打ちそば専門店「寺そば一会(いちえ)」が開店した。長野県伊那市の在来種「入野谷(いりのや)在来」を使った十割そばが看板で、店主の松山伸介さん(60)によると、三河地区で味わえるのはこの店だけという。

 

 松山さんはJA蒲郡市に30年以上勤め、金融や介護業務に携わった。55歳の時、「自分の人生は自分で決めたい」と退職し、好きなことを書き出すと「そば好き」が残った。豊川市の「寺そば萩山慈恩寺」のつゆにほれ込み、2023年6月に大将の深津弘さんに弟子入りし、異色の転身を果たした。

 

 まず深津さんのそば打ちを見てまねた。最初はそばが切れてつながらなかったが、手取り足取り教わった。「蒲郡で待っている人がいる」と地元での開店を目指し、今年8月まで約3年腕を磨いた。

 

 自宅敷地内の借家が空いたため、今年2月から店舗に改装した。かつての母屋の古材を生かした62平方㍍の平屋で、畳敷きの店内にカウンターとテーブル四つの18席を設けた。店名は「一期一会」から取り、「一度、僕のそばに会ってほしい」との願いを込めた。

 

修業中の松山さん㊧と大将の深津さん=2023年、豊川市で
修業中の松山さん㊧と大将の深津さん=2023年、豊川市で

石臼で自家製粉、昆布の精進つゆ

 

 入野谷在来は、わずか6粒から復活した「幻のそば」。知人の紹介で伊那市の農家と出会い、半年間、現地に通って交渉を続けた。その熱意が実り、高遠そば組合に仲間入りして仕入れが実現した。

 

 売買や栽培を禁じる組合の規約を守り、有機栽培・無農薬の玄そばを仕入れて店内の石臼で自家製粉する。たんぱく質が多く粘りが出るため、つなぎなしでも打ちやすい。「香りと味が濃いので、ダイレクトに感じてほしい」と十割にこだわった。もちもちとした食感と豊かな風味が楽しめる。

 

 つゆは修業先から受け継いだ精進つゆ。かつお節を使わず、昆布とシイタケでだしを取る。九州産と地元のしょうゆ計3種を合わせ、三河好みの甘口に仕上げた。あっさりとしながらも深いこくが感じられる。まず塩で、次につゆで味わうのが松山さんの薦める食べ方だ。

 

 十割そばのほか、北海道産のそば粉を使った二八そばもある。天ぷらは地元の太白ごま油で揚げた季節の野菜とちくわの磯辺揚げ。そばの実と北海道の乳製品を使ったアイスも用意した。

 

入野谷在来の十割そば(提供)
入野谷在来の十割そば(提供)

大将へ「感謝しかない」

 

 松山さんは前日の夕方に粉をひき、当日は午前5時からそばを打つ。開店後は「涙が出るほどおいしい」と喜ぶ客もいるという。妻の江美さん(61)らと店を切り盛りし、「お客さんの笑顔と『おいしかった』の一言があれば十分。少人数でやっているので、ゆっくり来てほしい」と話す。

 

 開店までに人とのつながりを実感し、周囲への思いも口にする。修業先の大将には「感謝しかない。足を向けて寝られない」と涙ながらに語る。

 

 営業は午前11時~午後2時半で、売り切れ次第終了。定休日は日曜と月曜、第3火曜。十割そば(180㌘)は1700円、二八そば(同)は1200円で、いずれも130㌘の姫盛りもある。駐車場は7台。問い合わせは同店(070・3838・4083)へ。

カウンターやテーブルが並ぶ店内
カウンターやテーブルが並ぶ店内
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林大二朗

 愛知県蒲郡市生まれ。2020年、地元蒲郡が好きで東愛知新聞社に入社。同年から蒲郡担当、市政や地域行事、文化など全般を取材。ドローンを使って東三河の名所を空撮したルポ「大二朗記者の空からの訪問」を不定期連載。これまで、三河大島や三河国分尼寺跡、日出の石門などを空撮してきた。ドローン技術向上のため、国家資格「一等無人航空機操縦士」を24年に取得。読者の皆さんが楽しんでもらえる記事と記憶に残る写真を掲載できるよう、日々、頑張っていきます。

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