豊川市白鳥町のスズキが撤退後、進出が予想されるイオンモール。東三河で屈指の大型商業施設の誘致に、市民の期待が膨らむ一方、商店主からは経済への影響を不安視する声が上がっている。
外部からの商業施設の進出は、地元商店主らにとって死活問題だ。アベノミクスが地方や中小企業に行き渡らず、個人消費が落ち込んでいる今、トドメを刺されると言っても過言ではない。
それでも、市外からの“ライバル出現”は今に始まったことではない。平成に入り、市内にはハクヨプロデュースシステムによる「アクロス豊川」や「マチニワとよかわ」が開発され、ミスタードーナツやABCマート、スターバックスやスポーツデポなど、全国チェーンの店舗を誘致。19年前にはイオン豊川店の前進・豊川サティが開店した。声を上げるべきタイミングはいくらでもあった。
消費者は新しいモノや珍しいモノ、有名なモノに弱い。買い物の行き先が、地元の商店街から真新しい店に移るのは自然の法則だ。それでも、閑散とした商店街にも、昭和の時代から何年も続く店は存在する。魅力あふれる商品やサービス、何より消費者からの信頼が生き残るカギだ。経営者は時代に合わせた知恵や戦略が求められる。
二輪車製造などで、市の経済を支えてきたスズキ。土地を誰に売るかは、スズキに権利がある。それでも、市は「傍観者」であってはならない。予測される影響を事前に調査し、出店者側に要望する役目を持っている。
特に、すぐ隣の市民病院への影響度の調査は必須だ。来店客による渋滞で立ち往生した救急車の中で、傷病者が命を落とすことは絶対にあってはならない。専用道路や迂回路の整備など、対策が必要だ。現在の位置への市民病院移転を掲げて当選し、3期目に臨んでいる山脇市政は、その使命を請け負っている。
(編集局次長・豊川市担当=由本裕貴)