朝鮮半島情勢一触即発も日本人は「平和ボケ」
日本人が戦争を本気で意識したのは、戦後70年の時を経て、今が初めてと言っていいだろう。朝鮮半島情勢が一触即発だ。これまでになく圧力をかけ続けるアメリカに、一歩も引かない北朝鮮。この数日間で国民の危機意識が一気に高まってきたが、「平和ボケ」は否めない。
先日、豊川市内のある祭り会場で、子どもたちが遊んでいた。「オレ、トランプ!」「僕、キム・ジョンウン!」「ミサイル撃つぞ」「核でやり返すよ」。まるで戦時下の会話だ。テレビの影響を受ける子どもの言葉は、市民の関心の高さを証明している。
その一方で、緊急事態を市民に伝える役目を持つ自治体の反応が鈍い。政府は21日、各都道府県の防災・国民保護担当者にミサイル飛来時に推奨する避難行動やQ&Aを伝達。東三河の各自治体にも県防災局防災危機管理課を通じ、同日中に市民に周知し、問い合わせに対応するよう指示が降りた。しかし、豊橋や豊川、蒲郡市が登録型の防災メールで市民に発信したのは7日後の28日だった。
政府はミサイルを想定した住民の避難訓練も早急に行うように呼び掛けた。徳島県庁は24日、県庁にいる県民の避難行動や情報収集体制の確認を行う訓練を行ったが、愛知県内では今のところ行われる予定はない。一部の自治体では、緊迫する情勢を全く把握していない若手職員が垣間見られる。
豊川市内では学校の教員や児童クラブの職員向けに緊急時の子どもらを守るための避難行動が書面で伝えられた。29日早朝には、ミサイル発射情報を受けて地下鉄の東京メトロが初めて一時運転を見合わせた。地下で車内に取り残された乗客らは「ついに戦争が始まったのか」と表情を曇らせたという。
テレビやインターネットなどメディアの影響力には限界がある。行政や教育機関、公共交通機関も積極的に情報を発信することで、日本が危機にさらされている“現実性”が高まる。「どうせ何も起きないだろう」ではなく、「何か起きるかもしれない」と考えることが、自分や家族の命を救う一歩となる。
(由本裕貴)