ミシュラン2ツ星でアジアを代表する香港のフランス料理の名店「Amber(アンバー)」で、関谷醸造(設楽町)の銘酒「蓬莱泉」や、その酒かすを与え育てた鳳来牛「源氏和牛」など愛知県産品をふんだんに使ったコース料理を出すイベントがあった。現地ではなじみの薄い県産品の販路開拓と観光客誘致を狙い、東三河の食品関係者らが企画。予約で瞬く間に埋まった70席には富裕層らが座り、料理を堪能した。
食材を足掛かりに、県内へ訪日外国人を呼び込もうと企画した「源氏和牛で、愛知県と世界をつなげてもええじゃないか!」と銘打つプロジェクトの第一弾。
愛知県は人気の高い観光地を巡るゴールデンルート上にありながら、通過点の位置づけで、滞在率は低い。危機感を募らせた関係者らは、訪日外国人が「食」を楽しみにしていることに注目。世界の有名店を起点に食材で愛知の魅力を発信することにした。
今月23日のイベントでは、メンバーの鳥市精肉店(豊橋市東小田原町)や関谷醸造、新城市愛郷の源氏和牛農家らが現地を訪れ、様子を見守った。
12皿7万4000円のコースには、源氏和牛のほか、三河一色ウナギ、アカザエビ、味噌など県産品を多く使用。一品づつの料理には、蓬莱泉の「空」やスパークリング、完熟梅酒など、関谷醸造の酒を合わせた。アンバー総料理長のリチャード・エッケバスさんと名古屋市のフランス料理店「レスト・ケイ・ヤマウチ」のオーナーシェフ山内賢一郎さんが、交互に腕を振るった。
昨年11月、メンバーはリチャードさんを愛知県に招待。東三河の酒蔵や農場などを見学する中で、品質だけでなく、肥育環境や循環型農業にもこだわる仕事ぶりも知ってもらった。イベントでは、素材の良さを生かすだけにとどまらず、その際のインスピレーションも料理に盛り込まれた。終了後、リチャードさんから「輸出は可能か」などと生産者らへ具体的なアプローチもあったという。
源氏和牛を育てる久保田和男さん(60)は「世界に出しても恥ずかしくないと改めて自信につながった。今後は商業ベースで輸出する方法などが発展すればうれしい」、関谷醸造の関谷健代表取締役(46)は「イベントだけに満足せず、今後とも継続的に食材や酒を使っていただけるようにフォローしていきたい」と手応えを感じていた。
企画者で鳥市精肉店営業担当の柴田博隆さん(35)は「アンバーで食材が使われたことは、県食材のレベルの高さを説明するのに非常にプラスなる。人口が減少する日本で、外貨を獲得する取り組みは重要。今後も世界に影響力のある場所でPRして輸出につなげ、訪日旅行客の誘致を継続していきたい」と話している。
(飯塚雪)
アンバー総料理長のリチャードさん(左から3番目)と東三河の食品関係者ら(同)