国の文化審議会は20日、下条取水場旧ポンプ室など豊橋市上水道施設の5カ所を国登録有形文化財に指定するよう文部科学大臣に答申した。市内の登録文化財は9件目となる。同市教育委員会は22日、特別見学会を開催する。
登録文化財は、国土の歴史的景観に寄与▽造形の規範となっている▽再現することが容易でない-のいずれかに該当し、建築後50年を経過した建造物が対象となる。
上水道施設5カ所は市営として最初の水道施設で、同ポンプ室のほか、大江川水道橋、小鷹野浄水場緩速ろ過池、小鷹野浄水場旧ポンプ室、多米配水場旧配水池。
1928(昭和3)年から29年にかけて建設された施設で、一部は90年が経過した今も使われている。取水、送水、浄水、配水の上水道システムの基本的な構成を残すとともに、同市の上水道史としての歴史的景観を構成する。
22日の特別見学会は午前10時、午後2時の2回。小鷹野浄水場(東小鷹野2)の緩速ろ過池と旧ポンプ室、多米配水場旧配水池の3カ所を見て回り、見どころが紹介される。各1時間半ほどを予定している。
申し込み不要で、各回とも同時間に小鷹野浄水場へ集合する。当日の問い合わせは、市美術博物館(0532・51・2882)、浄水課(同・61・8761)へ。
各施設の概要は次の通り。
下条取水場旧ポンプ室(下条西町)
鉄筋コンクリート造り平屋地下1階で、1929(昭和4)年に建設された。1階はポンプ機械室、配電室、地下はポンプ本体など。外壁は石造り風で、入口と窓上には半円形アーチが付く。正面入口の階段は花こう岩タタキ仕上げ、ポーチの床はモザイクタイル貼りでロマネスク風建築となっている。正面の左右壁には、3面一帯のインディアンの面のレリーフが付いている。
大江川水道橋(牛川町)
鉄筋コンクリートで長さ11㍍、幅3・6㍍。1928(昭和3)年に造られた。下条取水場から小鷹野浄水場を結ぶ水道道路にあり、中柱の頂上部は球形にするなど装飾に富んでいる。今も道路として使われている。
小鷹野浄水場緩速ろ過池(東小鷹野2)
1929(昭和4)年と31年に建設した鉄筋コンクリート造りの水槽で面積5236平方㍍。敷地のほぼ中央、南北方向に五つの池が配置されている。当初は四つの池で計画され、31年に五つ目の池が増設された。全体の有効貯水量は約5320立方㍍。池はいずれも長方形で、四隅には丸みがついている。現在も使用されている。
小鷹野浄水場旧ポンプ室(東小鷹野2)
鉄筋コンクリート平屋建てで1929(昭和4)年に建設。現在は薬品注入機室に改修されている。1階はポンプ機械室、配電室など。重量感ある石造風の外観や、軒回りなど各所に施された幾何学模様の細部装飾が、近代浄水場の荘重な表構えをかたちづくっている。
多米配水場旧配水池(多米町)
鉄筋コンクリート造りで1929(昭和4)年に建てられた。配水池は半地下式長方形水槽。総有効貯水量が約4708立方㍍。上部にある通路入口建物は、外壁基礎に花こう岩が積まれ、壁はひさし軒下までタイル貼りで、出入口部分は曲面を持った石縁枠などでゴシック風建築となっている。昭和期の上水道施設の様相を伝える。2007年まで使用されていた。
(中村晋也)
小鷹野浄水場旧ポンプ室
多米配水場旧配水池通路入口