引退した競走馬 田原で活躍

2019/01/09 00:01(公開)
セラピー馬として子どもたちに寄り添うロベルクランツ=田原市のピッコロファームで
 足のけがで引退を余儀なくされた競走馬が、田原市でセラピー馬から競技馬まで幅広い活躍を見せている。堅実な走りで競馬ファンに愛されていたロベルクランツ(雄、9歳)は、障害のある子どもたちの心身に寄り添い、彼らの世界を広げる。

 「高いところは気持ちがいい」。車いすから降りた少年はクランツの上で目を輝かせた。最初は大きな体のサラブレッドを怖がっていた障害のある子どもたちも次々と挑戦。クランツは人とのつながりを楽しむかのように、子どもたちを乗せ、ゆったりと歩みを進めていく。
 ホースセラピーは乗馬や馬のえさやり体験などを通じて、張り詰めた気持ちをほぐしたり、運動機能を向上させたりするアニマルセラピーの一つ。同市大草町の乗馬クラブ「ピッコロファーム」を営む長江清仁さん(58)久美子さん(48)夫婦が取り組むきっかけとなったのは、以前働いていた乗馬クラブに届いた障害児の母親からの問い合わせだった。
 ちょっと手助けすれば誰でも乗馬が楽しめ、馬の活躍の場も広がるホースセラピーに以前から興味があり、久美子さんがRDA Japan(障がい者乗馬協会)の認定インストラクターの資格を取得した。
 クランツは宝塚記念、ジャパンカップなどG1レースで優勝を果たした名馬アドマイヤムーンを父に持つサラブレッド。デビュー戦で2着と好走し、2戦目で勝ち上がるなど将来が期待されていたが、右前浅屈腱炎を発症し17戦2勝の戦績で2014(平成26)年に現役を引退した。
 年間5000頭が登録を抹消される競走馬。その多くが殺処分となっているとみられる。近年、セカンドキャリアに注目が集まるものの、とにかく速く走るためだけに鍛え抜かれたサラブレッドを、改めて調教するには、資金・時間・人手がかかり、乗馬やセラピーへの受け皿は決して広くはない。
 そんな中、クランツは北海道で障害馬術や乗馬でのセカンドキャリアをスタート。ピッコロファーム立ち上げのために馬を探していた長江さんが、北海道の競走馬の生産育成牧場から一昨年11月に引き取った。
 怒りんぼうを装った馬-。来たばかりのクランツは耳を伏せ不機嫌さをあらわにし、食事のときには歯をむき出しにして威嚇してきた。だが、子どもたちがえさをあげたり、ブラッシングしたりするとすぐに本来の穏やかさを取り戻した。
 「すごく優しい馬。人との付き合いを覚えたらセラピーでも使えるのでは」という長江さんの予感は的中し、すぐにセラピー馬としての才能を開花。サラブレッドはとても繊細で、少しの音にも敏感に反応する。だが、クランツは花火の音やトラクターの走行音にも動じず、ダウン症の男の子を乗せて外も平気で歩く。重度の障害をもつ子どもが乗るまでじっと待てる我慢強さもあり、「乗り手に気をつかっているのが分かるんです」と久美子さんは言う。
 セラピーに乗馬、障害馬術、オールマイティーに活躍するクランツ。「かけがえのない仲間。こんなにいいパートナーにはなかなか出会えない。うちの宝」と、長江さんはそっとクランツを撫でた。
(飯塚雪)
続きを読む

購読残数: / 本

この記事は登録会員限定です
この記事は有料購読者限定記事です。
別途お申し込みをお勧めします。
最新記事

日付で探す

住まいLOVE不動産 光生会 さわらび会 虹の森 藤城建設 蒲郡信用金庫
158商品のおすすめドッグフードを比較 hadato 肌を知る。キレイが分かる。 全国郷土紙連合 穂の国