離職中の生活を支える失業保険は、「心身ともに就職できる意思と能力があり、求職活動をしても職業に就くことができないこと」が基本的な支給要件。受給資格者は、退職理由によって「一般の受給資格者」「障害者等の就職困難者」「特定受給資格者」に区分されますが、今回は「特定受給資格者」について考えます。
「特定受給資格者」とは、倒産・解雇などの理由により再就職の準備をする時間的余裕なく離職を余儀なくされた者のこと。ほかにも、有期労働契約者に対し更新の明示がなされていたにもかかわらず更新されなかったため自己都合退職扱いとなった場合など、一定のやむを得ない事情がある場合は、「特定理由離職者」として、「特定受給資格者」と同様の給付を受けられる場合があります。
基本手当の所定給付日数が長いなど手厚い保障が設定されている「特定受給資格者」に該当するケースを具体的に整理すると以下の通りとなります。
・倒産による離職
・事業所において大量雇用変動の届出がされたことによる離職
・事業所の廃止による離職
・事業所の移転により、通勤することが困難となったための離職
・解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く)による離職
・賃金の3分の1超が支払われなかったことによる離職
・労働条件の著しい相違が理由で離職
・賃金未払いが続いたことが理由で離職
・健康障害の生ずるおそれがあるなどの行政による指摘にもかかわらず、必要な措置が講じられなかったための離職
・事業主責任による休業が3カ月以上続いたことによる離職
・事業所業務が法令違反したことによる離職
失業期間中、「その労働者をどれくらい保護すべきか」という視点で決定される「特定受給資格者」は個人の判断で決められるものではありません。正確な離職理由をハローワークに申告し正規の手続きを踏むことで適正に受給するよう心掛けたいものです。
(後藤社会保健所労務士事務所 後藤祐子)
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