豊橋工業高のヤノさん 普通旋盤作業1級に合格

2020/01/14 00:00(公開)
定時制高校で学びなおしながら技術向上に励む=県立豊橋工業高校で
定時制高校で学びなおしながら技術向上に励む=県立豊橋工業高校で
 国家資格の技能検定「普通旋盤作業1級」に県立豊橋工業高校の男子高校生が合格した。本来、受験条件を満たしていないはずの高校2年生が、なぜ取得できたのか? そこには、ものづくりを学び直そうと定時制に飛び込んだブラジル人青年のひたむきな姿があった。

 「合格は厳しいと思っていたので、すごくうれしかった」と柔和な笑顔を浮かべる同校定時制2年のマルコス・ススム・ヤノ・フィリオさん(30)=豊橋市。6歳でブラジルから来日したヤノさんは、新潟県の中学校を卒業後、姉のいる豊橋市で工場の派遣社員として働き始めた。だが、20歳のときにリーマンショックが襲い、派遣切りに。幸い、豊川市で正社員の職が見つかったが、その苦い経験から「技術があっても、中卒では転職もできない」と、定時制での学び直しを決意した。
 技能検定は、知識や技能を保有している証しとして社会人が取る場合が多く、普通旋盤作業1級は7年以上の実務経験、もしくは2級所持者で2年以上の経験が必要。
 昨年夏に行われた試験では、4時間以内に普通旋盤を操作し、出された課題を作り上げた。回転する台に取り付けた金属に切削工具を当てて削り、はめ合わせのできる部品を3個製作。許される誤差は100分の3。ち密な機械操作と長時間の集中力が求められる。
 入学後、「工場で触っていた旋盤を基礎から学び、さらに高度な技術を身に付けたい」という思いから、1年生で2級を取得。1級の練習を始めた昨年の春には、9時間かけて形にするのがやっとだったが、教員や技能士の指導のもと、授業後の夜や休日返上で腕を磨き続けた。
 今は10年働いた会社を退職し、自動車部品工場でパートしながら学ぶ。10代の頃はお金を稼ぐための手段だったものづくりが「複雑な形を作る楽しさ、達成感を感じる中で次々と新しいものが作りたいと思うようになってきた」。
 入学当初に描いた正社員として就職する目標は、1級合格で工業高校の実習助手に変わった。「この年齢で高校に入り、技術を身に付けることで自信や、やりがいにつながった。若い子にも同じ経験をさせたい」。支えてくれた教員らの背中を追う。
(飯塚雪)
普通旋盤作業1級の合格証書を手にするヤノさん=同
普通旋盤作業1級の合格証書を手にするヤノさん=同
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