新城市の民家で起きている多頭飼育崩壊問題で、78匹の猫たちの不妊・去勢手術が8日、始まった。「どうぶつ基金」(兵庫県芦屋市)が発行するチケットを使い、無料で手術が受ける。今後、数週間かけてすべての猫の手術をすることになる。
この日は、豊川市を拠点に飼い主のいない猫の保護活動を続ける「ニャンとかしまい豊川」の女性メンバー2人が病院への搬送役を担った。午前9時、飼い主の男性(69)と新城市職員が立ち会う中、男性が事前にケージに入れてあった9匹の猫が、2人の女性の車に乗せられ、豊川市の病院に向かった。「ニャン豊」の2人が9枚のチケットに必要事項を記入した。当初は10匹の予定だったが、1匹がケージから逃げ出して家の中に隠れてしまった。
ケージに入れられた猫たちは、不安そうに時折、鳴き声を上げていた。車の荷台では毛布をかけてもらい、おとなしくしていた。運び出しは約30分で終わった。
猫は手術後、再びこの家に戻る。大量の猫を預かる場所がないためだ。中には感染症にかかっていたり、腹部に虫がいたりする猫もいるため、すでに保護した猫がいるシェルターなどでは預かれない。
病院の診療日程に合わせて順次、手術を受けることになる。男性宅はボランティアの掃除で一部はきれいになったものの、依然として臭いがひどい。男性は市民団体メンバーの指導で、トイレの掃除や正しい餌やりを始めたという。
猫の手術が終わり、家の中の環境が改善されて病気やけがをしている猫の治療が終わったら、新しい飼い主を探すことになる。市は猫の搬出に立ち会い、どうぶつ基金へ申請した通りに手術が進むかどうかを見守る。
この問題は8月31日に、男性の親族を名乗る人物から、豊橋市を拠点に活動する市民団体「命にやさしいまちづくり ハーツ」に電話があったことで発覚した。東愛知新聞が9月13日に報道し、事態が明るみに出た。市は市民団体の助言を受け「どうぶつ基金」を活用する要領を制定。男性が第1号として同28日に手続きを済ませ、今月5日にチケットが届いた。
事態の発覚から1カ月での進展だ。猫が手術を受けることで、少なくとも5年近く続いた近親交配による猫の繁殖は止まる。この間、男性宅を掃除したり、壊れた家具などを運び出したりするボランティアの輪が広がったほか、これまで市内にはなかった地域猫活動に取り組む団体設立の動きも出ているという。
男性は新しい飼い主に猫を譲ることには同意しているが、引き続きボランティアによる見守りや飼い方の指導が必要になりそうだ。
【山田一晶、菊地真衣(インターン生)】
猫はケージに入れて外に出された
車に乗せられた猫。この後、病院に向かった