豊橋市条例で「着用に努める」
「自転車利用者は、乗車用ヘルメットを着用するよう努めるものとする」。知らない人が多いが、「豊橋市自転車の快適で安全な利用の推進に関する条例」は、このように定めている。通学の児童生徒だけでなく、全年齢が対象だ。県内には、ほかにも6市町に同様の条例があるが、認知度が低い。豊橋市は着用を促すためにヘルメット購入補助をしているが、普及しないようだ。
自転車の走行中にヘルメットをかぶっていれば、けがは軽く済む場合がある。2020年の県内は、自転車関連で29人が死亡した。負傷者5948人。豊橋管内は死亡事故が1件、負傷者362人だった。死亡事故は、ヘルメットをかぶっていなかったとしている。
2017年の警察庁の調査によると、ヘルメット非着用時の致死率は着用時に比べて約3・3倍高い。また、致命傷となった部位は頭部が63%で、頭を強く打つなどして命を落としている。
対策として、県内の7市町(20年12月現在)がヘルメット着用を促す条例を設けている。まず16年に知多市が幼児、児童を対象に施行。翌年から名古屋、豊川、長久手、東海、豊橋の各市、豊山町が条例を制定した。豊川市は幼児、児童、生徒が対象。名古屋市は65歳以上の高齢者。豊橋、長久手、東海の3市は全年齢に着用を促している。努力義務なので罰則はない。
豊橋市は自転車死亡事故の死因の約7割が頭部のけがだったことや、高校生の事故が県平均は18・4%だったのに、豊橋が27・5%(17年)だったことが条例制定の理由となった。19年に条例制定。5条3項に「利用者は乗車用ヘルメットを着用するよう努めるものとする」と定められた。
しかし、市内を見渡す限り、小中学生以外にヘルメットを着用している姿は少ない。条例自体を「知らなかった」と話す人もいる。市は着用を促すため、市単独でヘルメット購入金額の半分(上限2000円)を補助している。また、広報活動に取り組んでいる。
一方、県は新年度予算案で「自転車乗車用ヘルメット着用促進事業費補助金」として全市町村対象に補助金3425万円を盛り込んだ。7歳以上18歳以下と65歳以上を対象に、市町村が上限2000円として購入費の半額を補助し、県は市町村が負担する金額の半分を、上限1000円として補助する。
豊橋市はヘルメットの購入補助事業費は今年度は300万円の約1500人分だったが、県の補助を受け、900万円の約4500人分を対象とする予算案を発表した。
東三河地域の他市は県の対象条件通りで豊川市と蒲郡市は約1500人。新城市は3年間で約770人、田原市は約870人が対象になると見込んでいる。
豊橋署交通課の本多幸治交通課長は「ヘルメットをかぶらないと事故で重傷化しやすい。自分の身を守るために着用してほしい」と話している。
【林大二朗】
豊橋市自転車の快適で安全な利用の推進に関する条例。下線部が着用を促す条項