「豊橋を舞台に映画を作ろう」と今夏、豊橋市内へ移住したプロデューサー兼俳優の谷口由里子さん(31)が、俳優仲間の蔭山ひろみさん(31)と立ち上げた「映画ができるまで、」というプロジェクト(PJ)が話題だ。東三河の魅力と映画作りを多くの人に知らせたいという思いから、制作過程を同名のツイッターで紹介している。制作費を募るクラウドファンディング(CF)も始めた。
2人は「毎日欠かさずツイッターに投稿する」と決めた。その日あった撮影の話題やスタッフとの打ち合わせから、東三河の撮影協力者や支援者らとの交流と、内容は幅広い。映画づくりの過程や地元での交流を余すところなく伝えようとしている。
ツイッターのアイコンに描いた似顔絵は蔭山さんの作だ。素朴なタッチの中に2人の映画作りへの思いなど深い意味を込めたという。
開始2カ月でフォロワー数も順調に伸びた。まちのコンビニ店員や通りすがりの学生らが「SNSの投稿みたよ」「映画の方ですよね」などと声を掛けてくる機会も増えた。地元FMラジオ出演で知名度はさらに上がり、エキストラを募れば枠を超える人が応募するまでになったという。
難航していた飲食店のロケ地探しもこうした縁が救った。イタリア料理店「イタリアの台所マドカ」(中浜町)での撮影交渉では店主から「いい作品を作りましょう」と気前よく場所を提供してくれた。2人の思いは着実に伝わり、映画を通じた縁の広がりに手ごたえを感じているようだ。
10月には2人が主演の短編映画「ひと駅、歩く」を撮影した。「オール豊橋ロケ」で映画祭にも出品した。地元での機運を盛り上げるため上映会も考えているという。
「今後のために大切な作品として仕上がった。いま関心を寄せてくれるファンや東三河の皆さんに見てほしい」と語る。
土地勘がない東三河でのロケ地選びは「とよはしフィルムコミッション」の鈴木恵子さんの存在が大きい。投稿にも「東三河のロケ地の神様」の枕詞で鈴木さんへの敬意を表している。
谷口さんは「3年前に市の映画祭がきっかけで豊橋の人たちと出会いました。豊橋のまちの魅力は『人』。移住2カ月半が過ぎ、面白いことに東京から通う蔭山さんの感覚がどんどん豊橋に近づいている」と笑みを浮かべる。
蔭山さんは「エキストラや協力者が楽しそうに映画づくりに乗ってくれている。無名の私たちをここまで支えてくれる豊橋の人たちの温かさを感じる。先陣を切った谷口さんの決意と勇気にも感謝です」と喜ぶ。
「映画ができるまで、」PJは現在、制作費を賄うCF=QRコード=がスタートした。2人は「皆様からの支援金で『映画ができるまで、』の取り組みを1人でも多くに届けられるよう全力を尽くす」と意気込む。サイトには活動内容がわかる動画も見られる。
【加藤広宣】